ソニーα7R IIIはバックアップ記録だと連写後の書き込み時間が長くなる!

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ちょっと前に騒ぎになりかけた、ソニー機のSDカードがらみのトラブル報告事例を見て不安になったものだから、ワタシもα7R IIIだけは念ためで2枚のカードを入れてバックアップ記録に設定している。

のはいいのだけれども、連写したあとのカードへの書き込み中の表示を見ていたら、スロット1とスロット2の書き込み待ち枚数の減り方がまったく同じなことに気がついた。

というだけだと「だからなに?」って思うかもしれないが、ちょっと考えたら、これはあまり歓迎できないことである。人によっては少々まずいことが起こりかねない事象なのである。

速いカードなのに遅いカードと同じスピードで書き込まれてる!

α7R IIIのカードスロットは、下側のスロット1がUHS-II対応。上側のスロット2がUHS-I対応になっている。

なので、ワタシはスロット1(下側)には300MB/秒のUHS-IIカードを、スロット2(上側)には95MB/秒のUHS-Iカードを入れている。

わかるよね、なにが問題なのか?

スロットのスペックもカードのスペックも違うのに、同じスピードで書き込んでいる。

これがうれしくない。

速いスロットに速いカードを入れているのに、遅いスロットの遅いカードと同じスピードで書き込んでいるのである。

バックアップ記録をやる場合、速いカードを使うメリットがない。ということである。

書き込みが遅いということは、処理待ちが長くなるということで、これはシーンによっては撮影機会の損失につながる。

だから、人によってはまずいことが起きかねない。歓迎できない事象かもしれないのである。

気になったので計ってみることにしたのだ

試したSDカードは以下の4種類である。

041 02

レキサーPROFESSIONAL 2000× UHS-II 32GB 旧レキサーが撤退を表明するちょっと前に買ったタイプ。レキサーは「倍速」表記、サンディスクは「MB/秒」表記で互いに遠慮しあっている雰囲気だったのが、このカードのラベルには「300MB/秒」とも書かれている。

↑現行品で速さと信頼性を兼ね備えているのがこちら。ちとお高いが。

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↑「純正SDカードのほうが安心だよ」って話も聞いたのでこちらもおすすめしておく。

041 03

サンディスクExtreme Pro UHS-I 64GB 転送速度は現行のと同じ95MB/秒だが、実はちょっと古い。4K動画に対応できない「U1」タイプである。

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↑現行のはU3なので4K動画もいける。Amazonだと海外リテール品ばっか出てくる。めっちゃ安いけど。

041 04

サンディスクExtreme UHS-I 32GB これは現行品。サンディスクで金ぴかラベルはお安めタイプの証である。ラベルには90MB/秒とあるが、ウェブサイトの情報によると書き込みは60MB/秒である。

↑95MB/秒のに比べると大手量販店でもだいぶ安い。

041 05

サンディスクExtreme 16GB こちらはだいぶ前に買ったもの。UHS以前のタイプで転送速度は30MB/秒とある。同時に試用するカメラが多いときには使うけど、普段は存在を忘れられている。

カメラの設定

記録形式:圧縮RAW+JPEG(ファイン・L)

ドライブモード:連続撮影 Hi+(10コマ/秒)

シャッター:電子先幕シャッター

撮影モード:M F1.4、1/250秒、ISO1000

記録メディア設定:優先記録メディア=スロット1、記録モード=同時記録(静止画のみ)、記録メディア自動切換=切

テスト方法:バッファフルで連写速度が落ちた時点から(この時点で連写はストップする)書き込み中表示が消えるまでの時間を計測した。

なお、「同時記録」はソニー語で、2枚のカードに同じ内容を書き込む「バックアップ記録」のことである。昔はRAWとJPEGをセットで記録できるモードのことを「同時記録」と言っていた。

書き込み終了までの所要時間についてはだいぶアバウトな測定である。一応、1/100秒まで計れるストップウォッチアプリを試用しているが、やってる人間が人間なんで細かい桁数の信頼性はとても低い。

なので、数回テストしてだいたいの平均値をざっくり丸めた数字だけを掲載する。そのへん、ご承知おきいただきたい。

ちなみに、どの条件でもバッファフル時の書き込み待ち枚数は70枚から72枚だった。

公称のファイルサイズは圧縮RAW+JPEG(ファイン・L)で1画像あたり約61MBなので、バッファ容量はだいたい4.3GB(めんどっちいから1GB=1000MBで計算してる。カードのメーカーもそうしてるしね。以下同である)。やっぱ、カメラは物量だねぇって思う。

テスト結果!スロット1だけにUHS-IIを入れるのが最速だった

以下、測定結果である。

条件1 スロット1にだけUHS-IIカードを装填した場合

  • スロット1:300MB/秒のUHS-II
  • スロット2:なし
  • 書き込み終了まで:約40秒
  • 記録枚数:82枚

スロット1にだけUHS-IIカードを装填した状態。先に書いてしまうとこれが最速だった。

ただし、4.3GBのデータの書き込みに40秒かかるということは、スピードとしては4300MB÷40秒=107.5MB/秒ぐらい。UHS-IIカードのスペックから考えるとなんだかだなぁ、って気もする。これがカードの側の問題なのか、あるいはカメラ側の問題なのかは不明である。

なお、バッファフル時の書き込み待ち枚数よりも撮影できた枚数が10枚ほど多いのは、連写中に書き込まれた分だろうと思う。

条件2 速めのUHS-Iカードをスロット2に装填した場合

  • スロット1:300MB/秒のUHS-II
  • スロット2:95MB/秒のUHS-I
  • 書き込み終了まで:約60秒
  • 記録枚数:79枚

スロット2にUHS-Iカードを装填してみた。現在のワタシの標準的運用方法である。

明らかに所要時間が伸びている。条件1のスロット1にUHS-IIカードのみのときのパターンよりも20秒ほど余分にかかっている

たったの20秒、と言えなくもないが、所要時間が1.5倍!と言えばもう少し重大そうに聞こえるかもしれない。

また、連写中に書き込んだ画像の枚数も少し減っている。誤差かもしれないが。

条件3 遅めのUHS-Iカードをスロット2に装填した場合

  • スロット1:300MB/秒のUHS-II
  • スロット2:90MB/秒のUHS-I(書き込み60MB/秒)
  • 書き込み終了まで:約80秒
  • 記録枚数:77枚

スロット2を書き込みが遅めの金ラベルに変えたパターン。書き込み時間はさらに20秒ほど長くなった。条件1基準で考えると2倍である。

つまり、スロット2のカードが遅いと、スロット1にどれだけ速いカードを装填しても意味がない。つまり、高価なUHS-IIを買うだけ損、ということでもある。

条件4 古くて遅いカードをスロット2に装填した場合

  • スロット1:300MB/秒のUHS-II
  • スロット2:30MB/秒のUHSじゃないやつ
  • 書き込み終了まで:約3分
  • 記録枚数:74枚

これはもう、ものは試し、のレベルのパターンである。

カードをフォーマットするだけで電池が切れるんじゃないかと思うぐらいの遅さである(ただでさえ遅いソニー機のフォーマットが、さらに牛歩のごとくに遅くなるのだ!)。

所要時間はたっぷりの3分。カップヌードル時間である。撮れた枚数もさらに減っている。あたりまえだが、カードからパソコンへのコピーも遅いので、正直なところ、実用性はほとんどない。ぽいぽいすることを検討するべきだろう。

条件5 UHS-IIカードを2枚装填した場合

  • スロット1:300MB/秒のUHS-II
  • スロット2:300MB/秒のUHS-II
  • 書き込み終了まで:約60秒
  • 記録枚数:79枚

では、スロット2にも速いカードを装填してみたらどうなるだろう。

と思って試してみたら、結果はスロット2にUHS-Iカードを装填した条件2とほぼ同じだった。

スロット2がUHS-I対応、つまり、UHS-IIカードもUHS-Iカードと同じあつかいになってしまっている。だから、UHS-Iカードを併用したのと同じ結果になったのだろう。

条件6 スロット2だけにUHS-IIカードを装填した場合

  • スロット1:なし
  • スロット2:300MB/秒のUHS-II
  • 書き込み終了まで:約60秒
  • 記録枚数:79枚

検証するために、スロット2にだけUHS-IIカードを装填してみたところ、条件2や条件5とほぼ同じ結果となった。

スピードとしては4300MB÷60秒=71.7MB/秒ぐらい。これがスロット2の性能と考えてよさそうである。

条件7 早めのUHS-Iカードを2枚装填した場合

  • スロット1:95MB/秒のUHS-I
  • スロット2:95MB/秒のUHS-I
  • 書き込み終了まで:約60秒
  • 記録枚数:79枚

まあ、予想どおりの結果である。

バックアップ記録をする際の最適解がこれなのではないかと思う。

ただし、カードからパソコンへのコピーにかかる時間を短縮したい場合はUHS-IIカードを使ったほうが有利となる。

条件8 スロット1にだけ速めのUHS-Iカードを装填した場合

  • スロット1:95MB/秒のUHS-I
  • スロット2:なし
  • 書き込み終了まで:約50秒
  • 記録枚数:80枚

どうしてこういう結果になるのかは不明だけれども、2枚装填だと60秒かかるところが1枚だけだと10秒ほど速い。

クレイジーな連写はやらないという条件でスロット1のみ運用ならこちらでも問題なさそうに思う。もちろん、パソコンへのコピー時間のことを無視すればの話である。

条件9 スロット1にだけ遅めのUHS-Iカードを装填した場合

  • スロット1:90MB/秒のUHS-I(書き込み60MB/秒)
  • スロット2:なし
  • 書き込み終了まで:約80秒
  • 記録枚数:77枚

スロット1に遅めのUHS-Iを装填したパターン。結果は条件3とほぼ同じだった。

4300MB÷80秒=53.8MB/秒という書き込みスピードとなる。

条件10 スロット1にだけ古くて遅いカードを装填した場合

  • スロット1:30MB/秒の非UHS
  • スロット2:なし
  • 書き込み終了まで:約3分
  • 記録枚数:74枚

これもスロット1に遅いカードを装填したパターンで、結果は条件4と同じ。

4300MB÷180秒=23.9MB/秒である。

107.5MB/秒のUHS-IIカードに比べるとかなしくなる数字である。昔はこれでも速かったんだけどね。

テスト結果のまとめ

ざっくりまとめてしまうと、

結論

  • お金に余裕があってスロット1のみで運用するならUHS-IIカードがおすすめ
  • スロット1のみ運用で節約したいなら速めのUHS-Iカードを使うべし
  • バックアップ記録運用なら速めのUHS-Iカード×2枚が安上がり

ということだ。

ただし、何度か書いているようにカードからパソコンへのコピーにかかる時間のこともあるから、そのへんを重視するならUHS-IIカードを使うメリットはある。

が、撮影時以外は待ち時間が長めでも苦にならないと言うなら、95MB/秒クラスのUHS-Iカードを選ぶのが安上がりでよいと思う。

まあ、バッファフルで70枚とか平気で撮れちゃうんだから、バッファメモリーを使い切ることはそんなにないとは思うんだけどね。

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↑テストで使ったカメラはこちら。ファイルサイズがでかいんで、書き込みの速さが気になるんである。

追記 α7R IIIはJPEG画像のほうが遅いらしいのでそれも検証してみた

Twitterでα7R IIIはJPEG画像の生成が遅いという情報をいただいたので、そちらもちょっとチェックしてみた。テスト環境は上とは違うので、ざっくりの傾向として見てもらうのがよいと思う。

所要時間 待ち残数 記録枚数
RAWのみ 18秒 54枚 83枚
JPEGのみ 38秒 68枚 83枚
RAW+JPEG 39秒 69枚 83枚

待ち残数:バッファフルの時点で表示されていた書き込み待ち画像の枚数
記録枚数:SDカードに記録された枚数(連写中に書き込まれた画像の枚数もふくまれる)

RAWのみに比べればRAW+JPEGのほうが時間がかかるのは当然だけど、なんとJPEGのみでもほぼ同じだけ時間がかかっている。それもRAWのみの2倍も、である。

バッファフル時の書き込み待ち残り画像数と書き込み終了までの所要時間から考えると、RAWのみだと「18秒÷54枚=0.33秒/枚」で処理されているのに対して、JPEGのみだと「38秒÷68枚=0.56秒/枚」と処理速度が落ちている。

JPEGのみとRAW+JPEGがほとんど同じ結果なので、RAWの負担に対してJPEGの負担がやたらと大きいということなのだろう。

ファイルサイズの違いもあるかなぁ、と思って、JPEGのみで画質モードを変えても試してみた。前述の結果はLサイズ・ファイン画質のもので、これをサイズはLのまあmで「スタンダード」と「エクストラファイン」に変えてやってみたのが下の結果。比べやすいように上の数字も入れておく。

所要時間 待ち残数 記録枚数
L スタンダード 35秒 68枚 83枚
L ファイン 38秒 68枚 83枚
L エクストラ 45秒 70枚 83枚

ちなみに、テスト条件での実測のファイルサイズは、スタンダードが4.7MB、ファインが7.5MB、エクストラファインが16MBだった。

画質モードによってファイルサイズが違い、それによって書き込みに要する時間が変わるのはわかる。でも、それを言うなら45MBのRAWのほうが速いのはどうしてなんだよ、って話にもなってしまう。

ちなみに、同じソニー機でもα7 IIIやα9はJPEGのみのほうが連写可能な枚数は多い。

それに対して、α7R IIIはJPEG(Lサイズ・ファイン画質)でも圧縮RAW、圧縮RAW+JPEGでも76枚。非圧縮RAWだと28枚に減るが、それ以外の条件では全部そろって76枚なのだ。

もしかして、多画素機特有の問題かとも思ってニコンD850とキヤノンEOS 5Ds Rのスペックもチェックしてみたが、どちらもJPEGのみのほうが連写可能な枚数は多い。α7R IIもα7RもやはりJPEGのみのほうが数字は多い。

有効画素数 JPEG RAW RAW+JPEG 備考
α9 2420万画素 362枚 241枚 222枚 連続撮影 Hi時、RAWは圧縮RAW。メカか電子かは記載なし
α7R III 4240万画素 76枚 76枚 76枚 連続撮影 Hi時(8コマ/秒)、RAWは圧縮RAW
α7 III 2420万画素 172枚 89枚 79枚 連続撮影 Hi時(8コマ/秒)、RAWは圧縮RAW
α7R II 4240万画素 30枚 23枚 22枚 高速連続撮影時(5コマ/秒)
α7R 3640万画素 18枚 14枚 13枚 速度優先連続撮影時(4コマ/秒)
D850 4575万画素 170枚 200枚 不明 高速連続撮影時(7コマ/秒)、RAWは12bitロスレス圧縮
EOS 5Ds R 5060万画素 510枚 14枚 12枚 高速連続撮影時(5コマ/秒)、UDMA 7対応カード使用時

これを見ても、α7R IIIだけがほかと違うことがわかる。なので、ほんとにα7R IIIだけの問題なんじゃないかと思う。

追記分のまとめ

ざっくり言ってしまうと、α7R IIIで連写後の書き込み時間を少しでも短くしたいのであればJPEGは捨てよってこと。

なにが原因なのかはわからないけれど、α7R IIIはJPEG画像を作るのに時間がかかるので、スピードを重視するならスロット1にだけUHS-IIカードを装填して圧縮RAWのみで撮る。これが最速ということである。

ただし、撮影後の処理の手間とかはいっさいシカトしているのと、バッファメモリーがたっぷり載っていることを考えれば、普通の人は気にしなくてもよさそうに思う。

最後に、情報を寄せていただいた金子さん( @knp8567 )に感謝します。

 

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