電子先幕シャッターの使われ方はメーカーによって違いがあるのだ

E-M1 Mark IIの低振動撮影設定画面

最近のカメラにはわりとあたりまえに搭載されている電子先幕シャッター。

明るいレンズで背景をボカして撮ったときに点光源ボケなどが欠けて写ることがある、という問題が起きて話題になったので、覚えている人も多いのではないかと思う。

ワタシも、手持ちの機材でボケ像の欠けがどの程度起きるかを大あわてでチェックしたくちである。

さて、この問題。実は起きるメーカーと起きないメーカーがあるのはご存知だろうか?

と言うのは、電子先幕シャッターの使われ方が、メーカーによって違っているからで、それによってボケ欠け問題が起きる、起きないの違いが生じるのである。

今回はそのあたりについてぶつぶつやっていこうと思う。

電子先幕シャッターについてのおさらい

電子先幕シャッターがどういうもので、メカシャッターや電子シャッターとどういう違いがあるのかとかについてはここではやらない。ただでさえ長くなっちゃうのにキリがなくなっちゃうからね。

さて、電子先幕シャッターは、名前のとおり、フォーカルプレーンシャッターの先幕を電子シャッターに置きかえたものだ。

露光開始時には動く部品がないためにメカ的な振動が発生しない。当然作動音もない。

微細なブレを低減できるうえ、後幕もメカを使わない電子シャッターと違って動体歪みがないため、各社とも積極的に採用しているわけだ。

一応書いておくと、後幕は物理的にメカが動くので振動もある。が、露光が終了したあとに発生する振動は写りには影響しないのでシカトできる。

また、後幕走行による作動音はあるが、先幕もメカでやるよりは静かになる。特に低速シャッター時は、メカシャッターだと先幕と後幕の両方の音が聞こえるのが、電子先幕シャッターだと後幕だけの1回になる。

ここまでだとメリットいっぱいに思えるが、マイナス面もある。それが、ボケの欠けや露光ムラの問題だ。

α7R IIIの電子先幕シャッター設定画面

ソニーα7R IIIの電子先幕シャッターの設定画面。初期設定は[入]で、レリーズタイムラグが短くなる。

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電子先幕シャッターの使用上の注意

キヤノンEOS 5D Mark IVの使用説明書を見ると、こんな記述がある。

「TS-Eレンズ(中略)を使用してシフトやティルトを行うときや、エクステンションチューブを使用するときは、必ず[しない]に設定してください」
「標準露出にならなかったり、露出ムラが発生することがあります」

EOS 5D Mark IV使用説明書 312ページより

使用するレンズなどによって露出ムラが発生する可能性があることが説明されている。

興味深いことに、これがミラーレスカメラになると、注意書きが増える。

「高速シャッタースピード、絞り開放付近で撮影したときは、ボケ像が欠けて写ることがあります」

EOS R使用説明書 150ページより

同じ注意書きはEOS RPの使用説明書(232ページ)にもある。

この、ボケ像が欠ける問題についての記述が一眼レフの使用説明書等にない理由は不明だが、一眼レフなら起こらない、ということもないと思うので、最近判明した事象だから新しいカメラの使用説明書にだけ記載されているということのかもしれない。

ほかのメーカーの使用説明書にも似たような注意書きがある。

「大口径レンズを装着して高速のシャッタースピードで撮影する場合、玉ボケなどにシャッターによる欠けが生じることがあります」
「他社製レンズ(ミノルタ/コニカミノルタ製レンズを含む)を使用するときは(中略)適正露出にならなかったり、画像の明るさにムラが出たりします」
「高速のシャッタースピードで撮影する場合、撮影条件によっては画面の明るさにムラが出ることがあります」

α7R III使用説明書 115ページより

「シャッタースピードが高速になるほど露光ムラが大きくなり、被写体のボケ像が欠けて写ることがあります」

X-H1使用説明書 127ページより

つまり、電子先幕シャッターを使うと、シャッタースピードが速い条件でボケ像が欠けて写ることがある。と各社が警告しているのである。

注意書きのないメーカーはどうしているのか?

ちなみに、現在、電子先幕シャッターを採用しているメーカーは、

  • オリンパス
  • キヤノン
  • ソニー
  • ニコン
  • パナソニック
  • フジフイルム

の6社である。

そのうち、使用説明書等にボケ像の欠け問題についての注意書きがあるのは、上にあげたキヤノン、ソニー、フジフイルムの3社だけ。

では、オリンパスやニコン、パナソニックはどうなのか?同じ問題は起きないのか?

結論から言うと、起きない。

なぜ起きないのかと言うのを含めて、メーカーごとに電子先幕シャッターの使い方の違いを見ていこう。

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オリンパスは高速側で強制的にメカに切り替わる

ドライブモードを「低振動撮影」にすると電子先幕シャッターを使った撮影となる。

低振動撮影を使うメリットは、

「シャッター動作による微小なぶれを低減した撮影ができます」

E-M1X使用説明書 160ページより

メカの先幕の動作に起因する振動がなくなるので、その分ブレが減らせるわけだ。

ただし、E-M1 Mark IIには「シャッターショックがボディーに伝わりにくいフローティングシャッター構造」が採用されている(E-M1Xも同じだと思うが、ウェブサイトには記述は見られない)ので、ほかの機種に比べると先幕ブレは軽減されているはずだ。

電子先幕シャッターの最高速は1/320秒で、それより速いシャッタースピードになると自動的にメカシャッターに切り替わる。

メカ先幕の振動による微ブレは、だいたいシンクロ同調速よりも速いシャッタースピードではほぼ無視できるようになるので、シンクロ同調速(1/250秒である)の1/3段上の1/320秒までとしているらしい。

ボケ像が欠ける現象は、シャッタースピードが1/2000秒あたりから高速側で起きるため、この方式であればボケ欠け問題はない。したがって注意書きも必要ない。

ようするに、低振動モードにしておきさえすれば、微ブレもボケ欠け問題も無視できるということ。らくちんである。

なお、低振動撮影時は連写Lモードで10コマ/秒連写が可能だが、後幕の走行による振動が次のコマに影響するので、機種によっては微ブレが起きる。こっそりと注意が必要である。

つまり、連写は電子シャッターを使う静音撮影モードのほうがブレを抑えられる可能性があるということ。覚えておくとよいと思う。

また、静音撮影モードへの自動切り替え機能は搭載していない。

キヤノンは初期設定だとボケ欠けが避けられない

一眼レフはライブビュー撮影時のみ電子先幕シャッターが利用可能となる。ミラーレスカメラもこれに準じる。

機能の名称は[LVソフト撮影]で、初期設定の[モード1]は電子先幕シャッターによる普通の撮り方。

[モード2]は全押しでシャッターが切れて動作停止となる。半押しにもどすなり指を離すなりすると露光後の動作(シャッターチャージなど)を行なう仕組みで、撮ったあとの音をタオルでくるんだりして抑えることができる。

ただし、EOS Rにはサイレントシャッターがあるし、EOS RPやEOS Kiss Mにもサイレントモードがあって、電子シャッターによる無音撮影が可能になっているため、[モード2]の存在意義は薄れていると言える。

[LVソフト撮影]を[しない]にするとメカシャッターでの撮影となる。

オリンパス同様、ちょっとわかりづらい感はあるが、わかってしまえば平気である。

問題なのは、電子先幕シャッターも最高速が1/8000秒まであるので、気づかないうちにボケ欠けが生じている場合があることだ。

一方、キヤノン機のシャッターはわりと先幕の振動が少ないタイプだから(なので、使用説明書でも作動音についてのみ言及している)、通常の撮影では微細なメカブレは気にしなくていいのではないかと思う(あくまで個人の印象である)。

なので、おすすめなのは電子先幕シャッターを使わないこと。

通常は[LVソフト撮影]を[しない]に設定しておいて、微ブレが気になるシーンでだけ[モード1]に切り替えるなり、サイレントシャッター(ないしサイレントモード)に切り替えるのがいいと思う。

ソニーは電子先幕シャッターでタイムラグを短縮

電子先幕シャッターを採用している6社の中でもっとも厄介なのがソニーだ。

ぶっちゃけ、キヤノンはオリンパスと同じような自動切り替え機能を積みさえすれば問題は解消するし、なんなら電子先幕シャッターをシカトするのでもいい。

が、ソニーは電子先幕シャッターを使ってレリーズタイムラグを短縮する仕様だから、電子先幕シャッターとメカシャッターの自動切り替えをやると、低速側と高速側とでレリーズタイムラグが変わるという問題が起きる。

なにしろ、ソニーはメカシャッター時のレリーズタイムラグの数字を公表していない。

ワタシが使っているα7R IIIの場合、電子先幕シャッター使用で0.02秒(20ms)というのは出ているが、メカシャッターと電子シャッター時の数値は不明だ(電子シャッター時は電子先幕シャッター時と同じだろうが)。

初代のα7Rが電子先幕シャッターなし機でレリーズタイムラグ0.19秒(190ms)という超絶っぷりを見せてくれているだけに、一抹の不安はぬぐえない。

ワタシのかなりあてになるとも思えない体感では、α7Rほどすごくはないが、それでも電子先幕シャッターのオンとオフとで違いが感じられるぐらいの差がある。

レリーズタイムラグの短さが生命線ともなりうるスポーツ系にはきびしそうな気がする。

動体歪みがあまり問題にならないα9の場合は電子シャッターを常用するのがベストだが、α7R IIIやα7 IIIだとそうもいかない。

ので、スポーツ系の撮影はボケ像の欠けはあきらめて電子先幕シャッターで運用、動体歪みが問題にならないシーンでは電子シャッターを使うのがベター、ということになるのではないかと思う。

困るのは電子シャッターを持たないα7 II系のモデルで、こちらはレリーズタイムラグの短さを重視するシーンではボケ像の欠けをあきらめる。ボケ欠けを避けたいならタイムラグが長くなるのはあきらめる。という二者択一を迫られる。うれしくない話だろうけれど。

シャッター最高速が1/2000秒に制限されるニコン

ニコンの場合、電子先幕シャッターを使う理由はメカの先幕走行に起因するブレの低減だ。

「電子先幕シャッターで撮影することにより、カメラブレを低減できます」

D850使用説明書 257ページより

Z7Z6活用ガイドの262ページにも同じことが書かれている。

ただし、一眼レフにはメカの先幕よりも大きな震動源であるミラーが存在することもあって、電子先幕シャッターが使えるのはレリーズモード(ドライブモード)が「Q(静音撮影)」「Qc(静音連続撮影)」「MUP(ミラーアップ撮影)」のときにかぎられる。

それと、もうひとつ。むむって感じの注意書きがある。

「電子先幕シャッター使用時は、シャッタースピードの上限が1/2000秒、ISO感度の上限が25600に制限されます」

D850使用説明書 257ページより

「電子先幕シャッター使用時は、シャッタースピードの上限が1/2000秒、ISO感度の上限がZ7は25600、Z6は51200に制限されます」

Z7Z6活用ガイド 262ページより

後半のISO感度設定範囲の制限はたいした問題ではない。

が、前半のはうれしくない。1980年じゃないのである。今どきのカメラを最高速1/2000秒に制限されて楽しめるとでも思うのだろうか。

Z 58mm F0.95 S Noctをラインナップしようとしているのに、である。

たしかに、最高速を1/2000秒に抑えてしまえばボケ像が欠ける問題からは逃げられる。

が、ユーザーにものすごい不便を押しつけたうえでの逃げである。

オリンパスが電子先幕シャッターとメカシャッターの自動切り替えをやっているのに、キヤノンやニコンにそれがない。いただけない話である。

で、どうするか。

ニコンが電子先幕シャッターをブレ軽減のためのメソッドとしている以上、オフを常用セッティングにするのは避けたい。

となると、微ブレ軽減と高速シャッターの両方が欲しいなら電子シャッターを使用するサイレント撮影機能を常用にする。というのが方法のひとつ。

もうひとつは動体歪みを避けることをメインに考えて、電子先幕シャッターを常用に、明るい条件で高速シャッターを使うときだけメカシャッターに切り替える。

まあ、この2つの選択肢で考えるのが妥当なのではないかと思う。

高速側で自動切り替えが可能なパナソニック

パナソニックもニコンと同じく(オリンパスもそうだけど)、先幕走行に起因する振動によるブレを抑える目的で電子先幕シャッターを使用している。

そして、ニコンと同じく上限は1/2000秒だ。

が、ニコンと違って、メニューの[シャッター方式]で[メカシャッター][電子先幕(シャッター)][電子シャッター]を選ぶことができる。

もうひとつの選択肢の[自動切換]を選ぶと、シャッタースピードによって使用するシャッター方式が自動的に変化する。

たとえば、DC-G9の場合、AE時は60秒から1/2000秒までの範囲を電子先幕シャッターが、その上の1/8000秒までの範囲をメカシャッターが、さらにその上の1/32000秒までの範囲を電子シャッターが受け持つようになっている。

つまり、[自動切換]にしておきさえすれば、微ブレも自動で低減できて、ボケ欠け問題も自動で回避できて、なおかつ1/32000秒の超高速までカバー。明るいレンズの絞り開放を使い放題というわけだ。

動体歪みのある電子シャッターに自動的に切り替わることを嫌う人もいるかもしれないが、それを気にしなければとてもスマートなやり方だ。

選択肢が多くてスマートに対応できるフジフイルム

パナソニック同様、メニューで[シャッター方式]を選べるようになっていて選択肢も多い。見た目は少しややこしいが、ようは3つの方式の合わせ技が多いだけなのですぐに飲み込める。

使用説明書等では微ブレの軽減については触れられていない。が、デメリットは書かれている。メリットなしでデメリットがある方式を搭載するとも考えづらいので、まあ、そういうことだろうと推察する。

さて、電子先幕シャッターの最高速は1/8000秒まである。なので、注意として、

「シャッタースピードが高速になるほど露光ムラが大きくなり、被写体のボケ像が欠けて写ることがあります」

X-H1使用説明書 127ページより

と書かれている。

ただし、これが適用されるのは[シャッター方式]で[電子先幕シャッター]を選んだときだけだ。

ほかのシャッター方式を併用する合わせ技モードを選ぶと、電子先幕シャッターは最高速が1/2000秒までとなる。

なので、ボケ欠け問題は自動で回避できるのだ。

具体的には[シャッター方式]で[電子先幕+メカニカル」または[電子先幕+メカニカル+電子]を選べばいい。

X-H1の場合、メカシャッターの最高速は1/8000秒、電子シャッターの最高速は1/32000秒。パナソニックDC-G9との違いは、[電子先幕+メカニカル]という選択肢があって、それを選ぶと電子シャッターには移行しないこと。動体歪みは絶対に避けたいという人には有利となる。

ただし、輝度によっては露出オーバーになるケースも出てくるのだから、必ずしも有利とは言いきれないのでご注意いただきたい。

なお、電子シャッター使用時はISO感度の設定範囲がISO200からISO12800に制限される。これは[メカニカル+電子]や[電子先幕+メカニカル+電子]にも適用されるので、こちらも注意が必要だ。

まとめ

例によって長くなってしまったのでざっくりまとめておく。

覚えておかないといけないのは、

 

電子先幕シャッターのメリット

  • メカ先幕に起因する微細なブレが解消できる
  • 作動音が低減できる
  • レリーズタイムラグが短縮できる

 

電子先幕シャッターのデメリット

  • 高速シャッターで露出のムラが起きることがある
  • 高速シャッターでボケ像が欠けて写ることがある

といったところ。

消極的対応策としては、ニコン式の「高速側を封印してしまう」方法があるが、これはユーザーにとっては不便を強いるものであってあまり歓迎はできない。

便利なのは、「高速側で自動的にメカシャッターに切り替える」方法で、オリンパス、パナソニック、フジフイルムの3社がこれを採用している。

ぶっちゃけ、そんなにむずかしい手法でもないと思うし、3社がやっていることから特許がらみでむずかしいとかでもないと思う。

いちばん厄介なのはソニーで、レリーズタイムラグを短縮する目的で電子先幕シャッターを使っているから、自動切り替え機能を盛り込めない。

α9やα7R III、α7 IIIのほか、APS-Cサイズ機のα6500/6400/6300にはサイレント撮影機能が搭載されている。動体歪みが気にならないシーンでなら電子シャッターを使って面倒を回避できるから、これを活用するのが便利そうである。

って、なんだかまとめまで長くなってしまったぞ。まあ、いいことにしよう。うん。

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