シグマ35mm F1.2 DG DN Artは予想を超える重さが泣けるが、説得力たっぷりの写りが楽しめる

α7R IIIと35mm F1.2 DG DN Art

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Artラインの単焦点は14mmから135mmまでだいたい出そろって(17mm/18mmだけまだ。でもF1.4は勘弁してほしいが)、発売時期の古いほうからリニューアルがはじまってもよさそうなところで一眼レフからミラーレスへの転換期を迎え、DG DNの時代が幕を開けた。その第1弾として発表されたうちの1本がこの35mm F1.2 DG DN Artだ。

一眼レフ用として設計された35mm F1.4 DG HSM Artよりもちょっぴり明るいだけなのに、フィルター径は67mmから82mmにサイズアップ。重さは755g(Eマウント用)から1,090g(Lマウント用)に増している。

広角系のレンズはショートフランジバックかで小型軽量化できる、と誰かが言っていた気がするのだが、じゃあこれはいったいなんなのだろう?と思ったりもする。

今回はそんな35mm F1.2 DG DN Artについてぶつぶつやっていきたい。

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F1.4 DG Artよりも大きくて重くなった理由

α7R IIIと35mm F1.2 DG DN Art

さて、35mm F1.2 DG DN Artは名前からわかるとおり、フルサイズのイメージサークルをカバーする(=DG)ショートフランジバック設計(=DN)のレンズであり、一眼レフ用のF1.4よりも小さくて軽いものになると予想していたのがF1.2で1kg強である。

なんだってこんなにデカ重にと思うが、これはたぶん、一眼レフ用のF1.4が遠慮気味に設計されたレンズだったからではないかと思っている。

このレンズはArtラインの最初の1本で、発売は2012年の11月。これがどんなふうに評価されるかまったくわからない状態で、シグマの中に「オレたちがこんなレンズを出しちゃっていいんだろかね」みたいな迷いがあったのではないか。

その迷いから、あまり大きく重くならないように周辺部の性能を少し我慢した。結果、今のArtラインの平均値から考えるとぐっと小型軽量におさまった。そういうことではないかと個人的に、かつ勝手に想像している。

35mm F1.2 DG DN Artと35mm F1.4 DG HSM Art

言わずもがなだが、右が新しいF1.2、左がF1.4。長さの差よりも太さの違い、ボリューム感が断然違う。

その後、Artラインが充実していくに連れて自信を深めていったのだろう、次第に本気を出してきた。と言うか、遠慮がなくなってきた。

それが読み取れるデータがこちらである。

発売年月 レンズ名 大きさ 重さ
2012年11月 35mm F1.4 最大径77.0×長さ94.0mm 665g
2014年4月 50mm F1.4 最大径85.4×長さ99.9mm 815g
2015年3月 24mm F1.4 最大径85.0×長さ90.2mm 665g
2015年11月 20mm F1.4 最大径90.7×長さ129.8mm 950g
2016年11月 85mm F1.4 最大径94.7×長さ126.2mm 1,130g
2017年7月 14mm F1.8 最大径95.4×長さ126.0mm 1,170g
2017年4月 135mm F1.8 最大径91.4×長さ114.9mm 1,130g
2018年5月 70mm F2.8 最大径70.8×長さ105.8mm 515g
2018年6月 105mm F1.4 最大径115.9×長さ131.5mm 1,645g
2018年11月 40mm F1.4 最大径87.8×長さ131.0mm 1,200g
2019年1月 28mm F1.4 最大径82.8×長さ107.7mm 865g
2019年7月 35mm F1.2 最大径87.8×長さ136.2mm 1,090g

上の表はArtラインの単焦点レンズを発売年月の順に並べたもので、Artレンズの大きさと重さを時系列で見ることができる。グラフにするとこうなる。

線の色は、青が最大径、緑が長さ、赤が重さをあらわしている。適当に重ねただけなのでそれぞれの線の位置関係とかは突っ込まないように。真ん中当たりの谷は70mm F2.8 DG MACRO Artで、その右の高い山は105mm F1.4 DG HSM Artである。この左端に35mm F1.4 DG HSM Artがあって、右端が35mm F1.2 DG DN Artということになる。

凹凸はあるが、おおまかな傾向としては右上がり。つまり、新しいものほど大きく重くなっているのである。

雑に断定すると、やはりF1.4はやや無難なところをねらった、あまりとんがりすぎていない設計で、性能とサイズのバランスを重視したレンズとも言える。

一方のF1.2は、性能さえよければ大きくても重くてもかまわない、という開き直りのうえで作られている。

しかも、ショートフランジバック仕様なだけに圧倒的高性能であることがいちばんに求められ、なおかつ大口径化もはかっている。

そういうのもあって、この大きさ、この重さなわけである。文句は言えない。

が、愚痴は言う。言わせてほしい。

重たいよう。しんどいよう。

35mm F1.2 DG DN Art

Eマウント用の場合、「AFL」ボタンはフォーカスホールドボタンとして機能を割り当てることができる。

35mm F1.2 DG DN Art

絞りリングは個人的には使わないけれど、操作感は楽しい。電子ダイヤルで操作するより細かく調整できたりする。ボディ側操作となる「A」ポジションにロック機能がないのは残念。

35mm F1.2 DG DN Art

絞りリングのクリックの有無を切り替えるスイッチがある。動画仕様である。

サイズと重さから考えれば必然の高性能

例によってカメラはソニーα7R IIIを使用したが、Artラインのレンズはサイズと重さが性能の目安になるという持論を裏付ける仕上がりだった。

絞りを変えて撮った遠景をピクセル等倍で見ると、画面中心部は絞り開放でわずかにアマめ。と言っても、F2やF2.8と比べての話で、1枚だけ見ている分には気にならないだろう。たぶん、2400万画素機なら絞り開放からばっちり文句なしだと思う。

35mm F1.2 DG DN Artの作例

以下は画面の中央付近と左上隅を700×700ピクセルで切り出したもの。クリックすると拡大する。

35mm F1.2 DG DN Artの作例

F1.2中央

35mm F1.2 DG DN Artの作例

F1.2左上隅

35mm F1.2 DG DN Artの作例

F2.8中央

35mm F1.2 DG DN Artの作例

F2.8左上隅

35mm F1.2 DG DN Artの作例

F5.6中央

35mm F1.2 DG DN Artの作例

F5.6左上隅

周辺部はF2.8でまずまず。F5.6まで絞れば四隅までシャープな描写になる。

F11よりも絞ると回折の影響が目立ってくるが、最小絞りのF16でもそれほどアマくはならないから、わりと安心して絞っていける。

ボケもきれい。細かく見ると前ボケが少しだけざわつくような感じはあるが、ピクセル等倍で見てのことなので気になることはあまりないだろう。

35mm F1.2 DG DN Artの作例

絞り開放のボケは前後ともになめらか。前側のコントラストが高い部分の微ボケが少し二線ボケっぽくなる場合があるが、ピクセル等倍で見ての話なので気にしなくていいと思う。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F1.2 1/6400秒 マイナス0.7EV ISO100 AWB

35mm F1.2 DG DN Artの作例

寄ったときの点光源ボケはこんな感じ。絞り開放なので口径食が出ているが、11枚羽根の円形絞りのおかげでF4ぐらいまで絞ってもそこそこきれいな形をキープしてくれる。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F1.2 1/500秒 ISO100 AWB

DNレンズはカメラ内補正機能を前提にした設計なので、一眼レフ用のArtラインと違って歪曲収差を補正しきっていない。量としてはそれほど大きくはないし、曲がり方もへんなくせはない。解像感を優先するならカメラ内補正をオフにしておいて、歪曲が気になるカットだけ後処理で補正するのもありだろう。

周辺光量はカメラ内補正がオフの状態では少々目立つ。が、F2.8であまり気にならなくなって、F4まで絞れば無視できるレベルになる。

補正をオンにするとかなり改善するが、フラットに仕上げたいならF2.8までは絞ったほうがいいだろう。

35mm F1.2 DG DN Artの作例

歪曲収差補正:切 周辺光量補正:切

35mm F1.2 DG DN Artの作例

歪曲収差補正:切 周辺光量補正:オート

35mm F1.2 DG DN Artの作例

歪曲収差補正:オート 周辺光量補正:切

35mm F1.2 DG DN Artの作例

歪曲収差補正:オート 周辺光量補正:オート

ワタシ個人は絞りを開けて周辺部が暗く落ちるのはむしろ好物だったりするので周辺光量補正はオフにしている。周辺光量がほしいのは多くの場合周辺部までシャープな描写がほしい=絞っているので問題はないし、必要なときは後処理で補正すればいい。まあ、好みの問題ではある。

35mm F1.2 DG DN Artの作例

絞り開放なのにピントが合った部分はキレッキレにシャープ。さすがである。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F1.2 1/2000秒 マイナス2.7EV ISO100 AWB

35mm F1.2 DG DN Artの作例

絞ればもちろん回折の影響が出てくるが、最小絞りはF16までしかないこともあって、そんなには画質劣化はない。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F16 1.6秒 マイナス2.0EV ISO100 AWB

35mm F1.2 DG DN Artの作例

ピクセル等倍で見ると1枚1枚の葉の輪郭やら葉脈やらのディテールがものすごい。多画素機との組み合わせならトリミングし放題な感じ。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F11 1/20秒 プラス0.7EV ISO100 AWB

35mm F1.2 DG DN Artの作例

絞り開放からこのシャープさもすごいが、被写体の凹凸や奥行きの表現も素晴らしい。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F1.2 1/200秒 プラス0.3EV ISO100 太陽光

35mm F1.2 DG DN Artの作例

わずかにボケた鎖の部分にほんの少しだけ色付きが見られる。が、これもピクセル等倍で見ての話だし、後処理での補正もむずかしくないと思う。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F1.2 1/250秒 ISO100 太陽光

35mm F1.2 DG DN Artの作例

解像力重視の設計だとこういうごちゃっとした被写体はざわざわするボケになりやすいが、そういうのがない。大きさや重さが気にならないならほんと使いやすいレンズだと思う。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F2 1/400秒 マイナス0.3EV ISO100 AWB

35mm F1.2 DG DN Artの作例

明るくてシャープでボケがいいレンズでの撮影はとても楽しい。構えるたびに「よいしょっ」が出るのもArtラインならではだ(小嘘)。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F1.6 1/640秒 プラス0.3EV ISO100 AWB

35mm F1.2 DG DN Artの作例

冬がきびしい地域なので外猫はあまり見かけない。Instagramにアップしたのはこの画像をピクセル等倍で切り出して少し明るく調整したもの。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F1.2 1/2000秒 マイナス0.3EV ISO100 AWB

35mm F1.2 DG DN Artの作例

古びた塗料や浮いた錆の質感がたまらない。周辺光量のほどよい落ち方も好みである。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F1.2 1/1250秒 マイナス0.7EV ISO100 AWB

35mm F1.2 DG DN Artの作例

仲よさげにちょこんと並べてある石の彫刻に惹かれて撮った1枚。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F1.2 1/500秒 ISO100 AWB

35mm F1.2 DG DN Artの作例

古い看板に寄ってみた。塗料のひび割れとかの再現がすごい。ピクセル等倍で見るのが無駄に楽しい。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F2.8 1/250秒 ISO100 AWB

35mm F1.2 DG DN Artの作例

画面も少し傾いてるけど、この家のほうが傾いてる。 α7R III SIGMA 35mm F1.2 DG DN Art 絞り優先AE F2.5 1/320秒 マイナス1.3EV ISO100 AWB

軽快さ重視ならF1.4 DGもおすすめだが……

悩ましいのはF1.4のほうがうんと小型軽量なことだ。

サイズは2本並べれば一目瞭然。細身のF1.4に比べてF1.2はぐっとボリュームが増している。付属のレンズフードもF1.4のは控えめサイズで逆付けできるぎりぎりのサイズなのに、F1.2のはぐっと外に張り出していてアピールが強い。

重さは実測でF1.4が737gでF1.2は1,085g(Eマウント用のレンズ単体)、その差は347gにもなる。小振りなレンズ1本分といったところ。体力の落ちたおっさんにはスルーするのがむずかしい数字だし、レンズを何本か持ち歩くことを考えれば軽いほうがありがたいに決まっている。

それにF1.4は、最古参とは言ってもそこはArtライン。性能が悪いわけではない。画面中心部は絞り開放でもシャープだし、少し絞れば四隅までいける。光学で歪曲収差を抑えているのも気分的にはいい。

ただ、大きさと重さを抜きにして考えるなら、やっぱF1.2を選ぶよなぁ、って思う。F1.4もいいのだけれど、F1.2は絞りを開けたときの解像がいいし(画面中心部はちょっぴり、周辺部はもう少し差がある)、つや感とか奥行き感とかもF1.2のほうが出やすいようにも思う。

重いけど。ほんと、マジで重いけど。ねぇ。

α7R IIIと35mm F1.2 DG DN Art

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