ミラーレスカメラのいいところを考えてみた

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一眼レフばかり使っている人には、ミラーレスカメラのいいところというのはわかりづらいんではないか。という気がしたので、思いついたあれこれをまとめておくことにする。

ちょっと前にTwitterで連投したネタだけれど、勢いにまかせて書いたのをもう少しわかりやすいように手直しもしてみた。例によって文字数は多めなんで、電車で移動するときとかの暇つぶしにでも楽しんでもらえればいいかと思っている。

その1 仕上がりに近い映像を見ながら画づくりができる

一眼レフの光学ファインダー(以下、OVF)は、レンズをとおった生の光が見られるが、反面、仕上がりがまったくつかめない状態で画づくりを考えないといけないのが難しいところだ。

過去の経験にもとづいて露出を補正したり、「こういう光線状態でこの設定なら、こんなふうに写るんじゃないかな」などと想像力をはたらかせつつ撮影することになる。なので、感のよさだったり経験の積み重ねだったりがものを言う。だから、うまく撮れるようになるまでには、それなりの修業、練習が必要になる。

一方、ミラーレスカメラは常時ライブビューである。モニターなり電子ビューファインダー(以下、EVF)を見ながら撮影する。ここに映るのは、露出レベルやホワイトバランス、ピクチャースタイルだとかピクチャーコントロールだとかの画像仕上げモードなどの設定が反映された映像で、シャッターボタンを押せば、おおむねそのままの画が記録できる(いろいろな大人の事情から、いつでもどんなときにもまるっきり同じ写りになるとはかぎらないことは知っておくとよい)。

つまり、実際に映るのに近い映像を見ながら撮るわけだから、勘がはずれてへんてこな色味になっていたりとか、画面の明るすぎや暗すぎには、シャッターボタンを押す前に気がつくようになっているわけ。ようするに、ミラーレスカメラは写真の経験が浅い人、カメラに慣れていない人にとって、失敗を防ぎやすいカメラということだ。

もちろん、一眼レフでもライブビューに切り替えれば同じことができる。が、一眼レフはファインダーで撮影するのが便利なようにつくられているので、ライブビューではAFが遅くて実用的でなかったり、中にはライブビュー映像に露出レベルを反映してくれないカメラもあったりするので厄介だ。

モニター画面にホワイトバランスや画像仕上げの設定が反映された状態で撮影できるのがミラーレスカメラの便利なところだ。

その2 広角系のレンズを小型軽量化&高性能化しやすい

一眼レフは、レンズのうしろにミラーが置かれていて、そのミラーをシャッターを切る瞬間に跳ね上げる構造であるため、レンズの後端から像面までのあいだにある程度の距離(バックフォーカスと言う)が必要となる。

バックフォーカスを長くすると、焦点距離が短いレンズ(おおざっぱには広角レンズのことである)ほど複雑な設計になりやすい。そのぶん、大きく重く、高価になる。性能をよくしようとすると、さらに大きく重くなるから大変だ。

一方、ミラーレスカメラはミラーがないので、レンズのうしろの空間を小さくできる。マウント面から像面までの距離(フランジバックと言う)が短いものが多いのはこのためで、これを生かしてカメラ本体の小型軽量化をはかっているわけだ。

たとえば、ソニーの一眼レフ用のAマウントのフランジバックは44.5mmだが、同じソニーのミラーレスカメラ用のEマウントは18mmしかなく、Aマウントより26.5mmも短い。そのぶんだけカメラ本体を薄くつくることができるし、上に乗っかる光学ファインダーもないので、背の高さも抑えられる。

フランジバックが短いことのメリットはそれだけではない。レンズ設計の立場からすると、自由に使える空間が26.5mmも増えるというのはものすごく大きい。一眼レフ用レンズに比べて制約がぐっと少なくなるのだから、いろんなことがやれる。

たとえば、超広角ズームの場合、一眼レフ用だと比較的お手ごろ価格のものでもわりと大柄になってしまうが、これは焦点距離の短さに対して、レンズを像面から遠くに置かなくてはならないから。つまり、フランジバックが長いからだ。

一方、ミラーレスカメラの場合はフランジバックが短いので、焦点距離の短いレンズは像面に近い位置に配置できる。そのぶん、コンパクトに設計できる。

キヤノンのAPS-Cサイズ一眼レフ用のEF-S 10-18mm F4.5-5.6 IS STMは最大径74.6mm×長さ72mm。一方、同じAPS-Cサイズでもミラーレスカメラ用のEF-M 11-22mm F4-5.6 IS STMだと最大径60.9×長さ58.2mmになる。焦点距離が同じでないうえに、EF-Mは沈胴式なので単純な比較は無理だとしても、ずいぶんな違いがあるのはおわかりいただけるはずだ。口径の違い(EF-Sのはフィルター径が67mm、EF-Mのは55mmなのだ)も大きい。

ただし、これは広角系のレンズにかぎった話で、もともとある程度のバックフォーカスが必要となる望遠系のレンズの場合は、フランジバックが短いぶんだけレンズが大きくなってしまうだけの可能性もある。なので、単純にレンズが小さくなるとは言い切れない。というのは覚えておくとよい。

ついでに書くと、最近は画像処理による歪曲収差補正を前提にした設計のレンズが増えてきている。

歪曲収差というのは、まっすぐな線がたわんだように曲がって写る現象のことで、これをきちんと補正しようとすると、レンズの構成枚数を増やしたり、ややこしい形状の非球面レンズ(形が複雑になるほど、そして口径が大きくなるほど高価になる)を多用したりしないといけないので、サイズが増し増しになってしまう。

なので、ほどほどのところで我慢して、サイズもコストもほどほどに抑えましょうよ、というのが従来の設計思想だったわけだが、ここに後処理での補正が加わると、歪曲収差が目立つ程度に抑えておいて、ほかの収差を減らしたりすることで、小型軽量化と低コスト化がさらにはかりやすくなる。で、最近はそういう考え方をするメーカーが増えてきた次第。

ただし、一眼レフのOVFでは補正前の映像しか見られないから、まっすぐなはずの線がぐにゃっと曲がった状態で構図を考え、フレーミングを決めなくちゃいけない。画面の水平や垂直の目安として使いやすい建物なんかもぐちゃっと曲がって見えているので、カメラを水平に構えるのもちょっと厄介になる。

それがミラーレスカメラであれば、歪曲収差はリアルタイムで補正できる。なので、画面上では歪曲収差はほぼゼロの状態となる。まっすぐの線がまっすぐに見えて気持ちいいし、水平も垂直もわかりやすい。これに慣れてしまうと、一眼レフの曲がったファインダー像(と書くと語弊があるのだけれど)に直面したときに、うへぇっ、と思うこと請け合いだ。

ちなみに、歪曲収差を補正すると、画面の端を部分的にカットすることになる。広角レンズに多いタル型の歪曲の場合は角を引き伸ばしてカットすることになるので、残る画面の画角はスペックよりも狭くなる。たとえばの話、歪曲収差の多い24mmスタートの標準ズームなんかだと、スペックは24mmでも実質的には28mm相当の画角でしか撮れない、なんてこともありえるわけだ。

その点、リアルタイムで歪曲収差補正を行なうタイプのミラーレスカメラの場合、全部が全部じゃないとは思うが、補正後の画角をスペック表に記載しているケースが多いらしい。なので、24mm相当のレンズであれば、ちゃんと24mm相当の画角が得られるということ。広角好きのユーザーには案外に重要なポイントだったりするので見逃してはいけない。

愛用のオリンパスM. ED 7-14mm F2.8 PRO。マイクロフォーサーズ用としてはずっしり系だけど、フォーサーズのED 7-14mm F4(最大径86.5×長さ119.5mm、重さ780g)に比べると1段明るくてずっと小型軽量なのだ。

その3 測距点のカバーエリアが広いので、特に動くものを撮るときに便利

一眼レフは、構造上、画面の隅に測距点を配置することはできない。サブミラーや測距センサーユニットのサイズといった制約があるからだ。まあ、カメラ本体をうんと大きくしても構わなくて、お値段も気にしないとかの条件をつければどうにかできるだろうが、そういうのを欲しがる人がどれだけいるんだという話になってしまうから、事実上不可能と考えていい。

対するミラーレスカメラは、像面でピント検出を行なう仕組みだ。画を撮るための撮像センサーが、ピント情報を得るための測距センサーも兼ねているので、画面のどこにでも測距点を配置できるのが有利な点だ。

実際は、画面の端のほうは像面湾曲(ピントが合う像面は平面にならないといけないが、これが画面の端のほうでゆがんだ面になってしまう現象。絞り開放で四隅がピンボケになって写る。絞り込むことで軽減できる)があるせいで、ほんとの端っこにまでは測距点がないのが普通だ。

とは言え、一眼レフに比べれば、はるかに広い範囲に測距点を配置できるので、ほとんどの場合はピントを合わせたい被写体が画面のどこにあってもまず困らない。

最近はモニターにタッチパネルが内蔵されているのがあたりまえになっているから、ピントを合わせたいところに触れるだけでOKだったりする。

このあたりは一眼レフのライブビューも事情は同じなので、画面の端にピントを合わせたいときはライブビューに切り替えて撮る、というやり方をしている人も多いだろう。

が、被写体が動くものだったりすると、やはりファインダー撮影でないと対応しづらいし、そうすると被写体の位置を測距点がある範囲からはずすことはできない。そういう制約があるわけで、測距点がカバーするエリアが広ければいいが、そうでないとそのぶんだけ窮屈な撮り方をせざるをえなくなる。

それに対して、ミラーレスカメラは測距点のカバーエリアが格段に広いので、動く被写体を自由な構図、フレーミングで撮れる。そういう強みがあるということだ。

ただし、ミラーレスカメラで動きものが撮れるだけのAF性能を持っているカメラはまだ多くないし、あまりお安くないので、単純にミラーレスカメラ有利とも言いきれないところだったりはする。

黄色い枠があるところが測距点を置ける位置。E-M1 Mark IIは、ミラーレスカメラとしてはそれほど広くないほうだが、それでもほとんどほ一眼レフよりはずっと広い。

その4 拡大表示で精密なピント合わせが簡単

夜景などの暗いシーンや、霧のようなコントラストが低いシーンでは、思っているよりもAFはあやしくなりやすい。あからさまにピントがボケているのに合焦マークが出ることもちょくちょくあるが、微妙なピンボケだと撮影時には気づきにくいこともある。

こういうのは、実は明るいシーンでもちょくちょく起きる。真っ昼間、特に難しそうでもない被写体、半押し時にもAFが迷うような挙動はいっさいなし、だったにもかかわらず、撮った画像はピンボケ(と言っても、絞り開放で撮ったのを拡大してようやくわかる程度のうすらボケで、F8に絞ったのは被写界深度におさまっていた)。なんてことが実際に起きるんである。

ちなみにこのときはカメラが十数台での比較作例で、そのうちの2台(同じメーカーのカメラでレンズを共用していた)が同じようなピンボケだった。そんな馬鹿な、って思うかもしれないけど、現実にあった出来事である。まあ、大丈夫そうだからと油断したワタシがいちばん悪いんですけどね。

そんなこともあったりするので、夜景の比較作例(高感度の画質を横並びで見せたりするヤツね)を撮るときは、一眼レフでもライブビューを使う。OVFでは細かいところまでは判別できないのが、ライブビューの拡大表示を使うと微妙なピントのアマさまでばっちり見える。しかも、仕上がりに近い明るさで、である。

基本的にはMFでのピント合わせになるが、最近は、拡大したままでもAFが使えるものが増えつつあって、そういうカメラではAFにまかせることにしている。MFでうだうだやるよりもAFを作動させたほうが早いし正確なのだ。

もちろん、それでピントが合わないこともあるわけだが、拡大で見ているのでピンボケしたらすぐに気づく。で、そういうときは、測距点の位置を変えてAF作動をやり直すなり、MFに切り替えるなりすればいい。非常に簡単。そして高精度。しかも安心。というのもあって、拡大AFが使えるカメラは大好きである。

ワタシの場合、ピクセル等倍で見せる作例が必要とされることもあるので、手持ちでも拡大表示を使ってピント合わせをすることもある。こういう撮り方をしようとすると、OVFのカメラはもうだめで(一眼レフの手持ち撮影でこういうことをやろうとするとかなり辛気くさいことになる)、やっぱミラーレスカメラだよなぁ、ってなってしまう。

ピクセル等倍で見てもばっちりなレベルのピント合わせをやりたいなら、現時点ではライブビューの拡大表示に頼るのがベストで、そういう撮り方を普段からするのであれば、一眼レフよりもミラーレスカメラのほうが便利なのである。

全画面表示の状態。

こちらは7倍に拡大した状態。E-M1 Mark IIでは最大14倍まで拡大できるので、ピントもしっかり合わせられる。高性能な光学ファインダーよりもずっとピント精度は高い。

その5 どんなアングルからでもらくらく撮影できる

最近はバリアングル式やチルト式のモニターを搭載したカメラが増えていて、ローアングルやハイアングルでの撮影が容易に行なえるようになった。ありがたい話である。

なにしろ、以前はローアングルといえば地面に這いつくばって首をねじ曲げてファインダーをのぞくかアングルファインダーを用意しないといけなかったし、ハイアングルはハイアングルで脚立が必要だった。

それが今では、ひょいとしゃがめばローアングル、頭の上に手を伸ばせばハイアングル、というふうに、とても簡単になった。おかげで服を汚す機会も減ったし、狭いところにカメラだけを突っ込んで撮るような、今までなら考えたこともなかったアングルからの撮影にチャレンジできるようになった。

そこまでべたなロー/ハイアングルでなくても、たとえば、子どもやペットを撮るときにも可動式モニターのありがたみは感じられると思う。

よく言われるのが、子どもやペットの目線で撮りましょう、というヤツ。大人の(あるいは人間の)目線ではなく、対象と同じ目線(高さ)でものを見るのはとても新鮮な体験だし、背景の写り具合を大きく変えられるのも楽しい。

が、子どもの目線で撮るにはひざをつくなりしゃがみ込むなりしないといけないし、そうすると移動するたびに立ち上がらないといけない。カメラをかかえてやるスクワットはけっこうしんどい。ペットの目線はもっと低いから、さらにハードなエクササイズになる。

それが可動式モニターだと腰を下ろさなくてもいいのでずっと楽になる。背中を丸めた姿勢を強いられるので、それなりにくたびれはするが、立ったりしゃがんだりを繰り返すよりはずっといい。子どもの動きにも対応しやすい。

とまあ、そういうのは置いておいて。

今どきのカメラはどうなっているのかと言うと、手もとのデータでは、ミラーレスカメラは42機種中バリアングル式が8機種、チルト式は29機種(フジフイルムの3方向チルトも含む)、固定式のは5機種しかない。

一眼レフも30機種中固定式13機種に対して、バリアングル式が9機種、αとかK-1のややこしいヤツも含めたチルト式が8機種。すでに過半数は可動式なのだ。

と書くと、可動式モニターが正義という話になってしまうのだが、モニター撮影のやりやすさを考えると、ミラーレスカメラのほうが有利なのは間違いない。

大きいのはやはり重さの違いで、一眼レフの高級機はそれなりに大きくて重たいから、ファインダーから目を離した状態でしっかりホールドするには腕力がいる。ミラーレスカメラも最近は重さのあるものが増えているし、大きなレンズをつければやはり重くはなるが、それでも一眼レフに比べれば、というのはある。ワタシなんかは腕力がひかえめなものだから、少しでも軽くできるほうがありがたい。

それと、一眼レフはメインがファインダー撮影なので、ライブビューに切り替えるとAFがうんと遅くなるのがストレスだったりする(どこのとは言わないが)。ライブビューのほうが測距点のカバーエリアが広くなって便利という面もあるが、どちらかと言うと長よりも短のほうが多いように思う。そういうところまで考えると、やっぱミラーレスカメラでしょ、って話になると思う。

バリアングル式モニターだと画面を見やすいように向きを変えられる。ローアングルやハイアングル、ウエストレベル撮影とかも便利で快適だ。

その6 作動音が静かでメカショックも小さくブレを抑えやすい

一眼レフは可動式のミラーを使ってファインダーに光を導く構造で、シャッターを切る瞬間だけそれを跳ね上げるようになっている。このミラー(メインミラーとも言う)の背後にはAF用の測距センサーに光を送るためのサブミラーがあって、これがシャッターを切るたびにばたばたと動く。

1枚ずつ撮るときにもそれなりの音がするが、連写にすると「かしゃかしゃかしゃ」というようなにぎやかな音になる。最近の連写の速いカメラの場合は「しゃ」の部分はほとんど聞こえなくて、ほぼ「かかかかかっ」といったワライカワセミ的音を立てる。まあ、元気いっぱいである。

ちょっと前にムスメの学校のイベントで見たのだが、出入りの営業写真館のスタッフとおぼしき人物が一眼レフで、ファインダー撮影とライブビュー撮影を使いわけていた。ようは、場の雰囲気を考えてやっているのだろうが、ワタシ的には面倒くせーことやってるなぁ、である。

なにしろ、ミラーレスカメラにはばたばた動くミラーがない。作動音は格段に静かだし、メカの振動に起因するブレも少ない。一眼レフをやめてミラーレスカメラに代えれば、静かなシーンだからライブビューに切り替えなきゃ、みたいな気配りもいらない。

最近は電子シャッター(撮像センサー側のスイッチ操作によって撮影を行なう機能)が使えるカメラも増えていて、こちらの場合は動作する部分が少ない(レンズの中の絞りだけ動く。実絞り式のカメラであればそれもない)ので、作動音はきわめておしとやかとなる。と言うか、ちょっと離れていればほとんどなにも聞こえない。「静音撮影」とか「サイレントシャッター」などとも言うとおりの静かさなのだ。

昔はカメラの作動音にまで目くじらを立てる人は多くはなかったが(音楽系のイベントとかゴルフとかは別だけど)、今はいろいろと気を使わなくちゃいけない世の中なので、そのへんは面倒くさくてかなわないと思うが、そういう面倒くささがミラーレスカメラなら解消するのだというのは見逃せないと思うのだ。

静音モードは電子シャッターを使うので、絞りの駆動音しかしない。圧倒的静かさでファインダー撮影もできるのもミラーレスカメラならではの強みだ。

その7 AF駆動が静かなレンズがほとんどだから動画で有利

フィルム時代からの長い歴史を持つ一眼レフにとって、動画はあとからわいてきた新機能であって、異物以外のなにものでもない。まあ、動画以前にライブビューだの像面AFだのも一眼レフにはもともと考えられない機能だったわけで、当然それに対する備えなどなかった。

たとえば、AF駆動用の動力源としてポピュラーになった超音波モーターにしても、ファインダー撮影では静音かつスムーズな駆動が可能だが、ライブビュー撮影時は動きがぎくしゃくしたり、かたかたという動作音が気になったりで、ばっちりなデバイスとは言いがたいところがある。

静止画ならAFの動きがぎくしゃくしてもどうということはないが、動画では動きの滑らかさも問題になるし、音がするのも厄介だ。

一方、ミラーレスカメラは最初から動画ありきのシステムとして企画・開発されている。当然、動画との相性は抜群にいい。中にはAF時の動作音がきになるものもあるが、大半のレンズは動画での使用も前提にしているのでほとんど音はしない。

AFの制御も動画向けに切り替わるので、スムーズな動きになる。モニターにタッチパネルを内蔵したカメラであれば、画面に触れるだけで複数の被写体に順番にピントを合わせていくことも簡単だ。

最近は一眼レフ用レンズでも動画対応仕様のAFを積んだものが登場してきているが、そのあたりはミラーレスカメラのほうが先行していると言える。

もっとも、プロの動画屋さんレベルになるとMFが主体になるっぽいので話も違ってくるようだが、一般的なアマチュアのレベルであれば、一眼レフよりもミラーレスカメラのほうが動画には向いていると思っていいだろう。

オリンパスのレンズで「MSC」マークが入ってるのは動画にも対応している。AF駆動音に悩まされる心配がいらない静音仕様なのだ。

その8 マウントアダプターがいろいろあるのでオールドレンズが楽しい

おおよそのミラーレスカメラはフランジバックが短いので、適切なマウントアダプターを用意しさえすれば、古今東西の一眼レフやレンジファインダーカメラ用のレンズを装着することができる(あたりまえだが、一眼レフと同じマウントのシグマsd Quattro/HやペンタックスK-01は除外である)。

多くのマウントアダプターは、筒にマウント座金を固定しただけの原始的な構造で、シンプルなだけに安価なものも多い(精度とかをしっかり確保しているものはそれなりにいいお値段だったりする)。それでいてさまざまな名レンズや迷レンズ、クセ玉たちの描写を楽しめるとあって、オールドレンズファンを狂喜させた。

一眼レフでも、フランジバックが短めのキヤノンEOSボディにニコンやヤシカ/コンタックスのレンズを取り付けられるアダプターは存在したが、フランジバックがうんと短い(つまり、マウントアダプターがつくりやすい)ミラーレスカメラの登場で、母艦となるカメラと装着するレンズの組み合わせの幅が飛躍的に広がったわけだ。

ワタシ個人は、今のデジタルカメラには解像力がいちばんに必要だと考えていて、ピクセル等倍での解像感がよくない写真を見ること自体がストレスになってしまっているうえ、仕事の都合上、作例写真には撮影データをつけなくてはならないことも多いので、EXIF情報に撮影データが残らない組み合わせには手を出しづらい。

というのもあって、マウントアダプターを活用することはあまりない(シグマのMOUNT CONVERTER MC-11やオリンパスのフォーサーズアダプターMMF-3は例外。あと、キヤノンのEFレンズをマイクロフォーサーズにつけてAFや手ブレ補正も使えるアダプターがあるのは知っているが、中古のEOSボディを買ったほうが賢そうな気がするレベルのお値段だったりするので見ないふりを決め込んでいるのだ)。

ただまあ、そういうのはワタシ個人の事情と都合と気持ちの問題であって、オールドレンズの写りが好きな人がそれを楽しむことにケチをつけたいわけではない。そういう人たちにとって、マウントアダプターがいろいろ選べるミラーレスカメラは、まさに天国なのだと思う。

シグマMOUNT CONVERTER MC-11は、AFやAEが全部使えるお便利タイプ。オールドレンズは面倒くさいけど、こういう便利なマウントアダプターは好き。

その9 お財布に優しい

ソニーの最近のカメラ(α9とかα7R IIIとか)やGMレンズとかのお値段を眺めると、若干懐疑的にならざるをえない部分もあるが、マイクロフォーサーズあたりはわりとお財布に優しいと思う。

いや、E-M1 Mark IIだとかDC-GH5やDC-G9だとかは、ミラーレスカメラとしてはそれなりにお高い部類に入るし、立派に厳しいよって言われそうだが、18コマ/秒とか20コマ/秒でAF追従連写ができたり、ハイエンドの4K動画が撮れたりするカメラが実売20万円台というのは、EOS-1D X Mark IIが14コマ/秒、D5が12コマ/秒で実売60万円なのを考えれば十分に破格だ。めちゃくちゃ安いとは言わないまでも、スペックから考えれば間違いなく安い。お買い得なのだ。

もっとも、一眼レフが持っている光学ファインダーやミラーとその駆動機構、測距センサー、測光センサーなどがミラーレスカメラにはないのだから、そのぶん安くてあたりまえ。というのはあるわけだが、買うほうとしては安いのは素直にうれしい。ありがたい。

レンズにしても、高いものは高いが、ほどほどのものもそこそこ多い。2万円台、3万円台でも描写性能の高い秀作レンズがけっこう選べたりする。味を求める人には物足りない部分もあるだろうが、総じて絞り開放からシャープだし、ボケもいい。

もちろん、欲しいカメラやレンズのクラスなどによっても違ってくるだろうが、おおざっぱには一眼レフよりもミラーレスカメラのほうがお財布に与えるダメージは軽めと考えていいと思う。

α7 IIなんかはわりと手が届きやすいし、FE 85mm F1.8も身近なプライスながら写りはなかなかよい。ソニーとしてはまあまあお財布には優しい部類である。

ミラーレスカメラがベストだとは思わないけど

とは言うものの、一眼レフには一眼レフのいいところがある。複雑なメカと光学ガラスの塊(ダハミラーのファインダーに安さと軽さ以上の価値があるなどとは思っていない)を詰め込んだ一眼レフや精緻で繊細なレンジファインダーに比べたら、ミラーレスカメラなどただのがらんどうだ。機械としての魅力は、まったくないとは言わないまでも、かなり薄い。

が、便利さでは一眼レフを圧倒しているし、小型軽量さも見逃せない。今のハイエンド機にかぎれば、プロ仕様の一眼レフをしのぐパフォーマンスも備えている(少なくともスペック上はだけどね)。

その一方では、電池の持ちがよくないとか、ファインダー像の遅延(最近はずいぶん挽回してきているけど)とかの欠点もある。マウント径が小さいせいで大型のレンズを取り付けたときの強度や耐久性にも心配がある。それ以前に、老舗の一眼レフを超えるレンズラインナップを持つミラーレスのシステムがない。

というふうなところまで考えはじめるとどっちもどっちなわけで、まじめにキリがなくなってしまうし、大事なのはむしろ、それが自分にとってどういう意味を持つかをよく考えることだと思う。どこがメリットになるのか、同様にどこがデメリットになるのかを、自分中心で考えて、そのうえで、ミラーレスカメラを選ぶのか、それとも一眼レフを選ぶのか、あるいは両方をうまく使いわけるのか、そのへん、よぉく考えてみるのがいいと思うのだ。

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