ニコンZ7、Z6につづいて、キヤノンからもフルサイズミラーレスカメラが発表された。
名前は「EOS R」。
キャッチコピーに「写真は進化する。」とあるので「R」は「Revolution=革命」あたりを意識していそうな印象だ。
とりあえず、現時点でわかっていることをまとめてみた。
ポチップ
目次
有効3030万画素デュアルピクセルCMOSとDIGIC 8を搭載
EOS Rに搭載されているのはすでにフルサイズの一眼レフやAPS-Cサイズのミラーレスカメラで実績のあるデュアルピクセルCMOS。有効画素数は3030万画素で、EOS 5D Mark IV(3040万画素)とほぼ同じ。
ワタシ的にはEOS 6D Mark II(2620万画素)のミラーレスバージョンと考えていたので、これはちょっと予想以上だった。
画像処理エンジンにはEOS Kiss Mと同じくDIGIC 8を採用する。
ISO感度の範囲は常用でISO100からISO40000。拡張でISO50相当(L)、ISO51200相当(H1)、ISO102400相当(H2)も設定できる。これはEOS 6D Mark IIと同じスペックだ。EOS 5D Mark IVはISO32000までだったから少しだけれど進化している。
残念ながらボディ内手ブレ補正は見送られたものの、撮像センサーで検出したブレ量をフィードバックさせて手ブレ補正の制御を最適化するデュアルセンシングISはしっかり搭載。
RF 24-105mm F4 L IS USM、RF 35mm F1.8 マクロ IS STMの2本では静止画で5段分の補正効果が得られると言う。
マイナス6EVの暗さでもOKなデュアルピクセルCMOS AF
AFはいつもどおり、全画素で位相差検出が可能なデュアルピクセルCMOS AFを搭載。レンズの最適化の効果もあって世界最速の0.05秒を達成していると言う。
測距点数は自動選択時は143点と言うか143分割(横13×縦11)。1点AF(任意選択)時にはなんと5655点(横87×縦65)にもなるのがすごい。
普通に考えればこんなにいらないと思うだろうが、三脚撮影時などに細かく移動させたいときにはかなりありがたいスペックになるだろう。
画面に対するカバー範囲は横88×縦100%で、これはEOS Kiss Mと同じ。ただし、古いタイプのEFレンズ使用時などは横80×縦80%になるらしい。
α9の93%、Z7/Z6の90%に比べると少し低く、左右の端が使えないのは残念。と言っても普通に使うぶんには十分に広いと思う。
うわさでは顔認識のみで瞳AFはないと伝えられていたが、EOS Kiss Mにも搭載されていたしなぁ、と思っていたら、しっかり搭載されていた。ただし、ワンショットAF(シングルAF)時のみのようだ。この点は、ソニー機に負けているところだ。
驚くべきはAFの低輝度限界がマイナス6EVということ。これは絞りF1.4でシャッタースピードが2分になるというレベルの暗さでもちろん世界最強だ。しかも、位相差検出のみでいけちゃうんだからすごい。いちいちメニューで切り替える必要のあるニコンの「ローライトAF」よりも便利なんじゃないかと思う。
なお、スペック表の「オートフォーカス」に「拡大表示」という項目があって「約5倍/10倍拡大表示可能」とあるので、AFモードのまま拡大表示は可能(たぶん、拡大状態のままAF作動もいけると思う)なようだ。
連写スピードはAF追従だと5コマ/秒ともうひとつな数字。ピント固定だと8コマ/秒にはなるが、10コマ/秒のα7 IIIや12コマ/秒のZ6(露出は固定になるが)に比べると物足りない感はぬぐえない。
シャッター最高速は1/8000秒だが、シンクロは1/200秒。これはZ7、Z6も同じだが、ソニー機はシンクロ1/250秒なので、スペック的には少し落ちる。電子先幕シャッターや電子シャッターもある。もちろん、フリッカー低減機能もある。
手抜きなしのハイスペックEVFは369万ドットで0.76倍
EVF(電子ビューファインダー)は0.5型、369万ドットの有機EL。倍率は0.76倍。画像を少し縮小して表示する、勝手にハイアイポイントモードと呼んでいるスタイルも備えている。標準の状態でケラレが気になるときに対応できる。
液晶モニターはタッチパネルを内蔵した3.15型という微妙なサイズで210万ドット。EOS 6D Mark IIと同じくバリアングル式を採用してくれている。
バリアングル式は、縦位置でもロー/ハイアングル撮影が容易なだけでなく、三脚に載せて俯瞰撮影するときに画面が雲台でケラレる心配がないとか、ブツ撮りなどで被写体の位置調整をしたいときに画面を見ながら動かせたりするので便利なのだ。
ボディ外装はマグネシウム合金製。ブラックに近いグラファイトカラーのように見える。レベルはどれぐらいかよくわからないが、防塵・防滴構造を採用している。シーリングのCGを見るかぎり、わりと頑張っている部類ではないかと思う。
グリップはフルサイズ一眼レフと似た形状で握りやすそうに見える。EOS 5D系やEOS 6D系を使っている人には違和感なく使えるだろう。
記録メディアはSDカードのシングルスロット。信頼性の面では物足りないが、小型化のしわ寄せがきやすい部分でもある。ただ、UHS-IIに対応してくれたので、スピード面でのストレスは軽減されるのではないかと思う。
バッテリーは標準装備がLP-E6Nで、ひとつ前のLP-E6も使用可能(ただし、USB充電はできないっぽい)。撮影可能枚数は常温で370枚。事前のリーク情報ではこれはモニター撮影時の数字で、ファインダー撮影時は350枚と伝えられている。EOS 6D Mark IIのライブビュー時の数字が340枚だったから、おおむね予想どおりだ。
別売のPD-E1を使うとUSB充電が可能。残念ながら給電はできないらしい。
サブ電子ダイヤルが上面に移動してマルチファンクションバーが新設
メイン電子ダイヤルはいつもどおりのグリップ上面だが、サブ電子ダイヤルは背面のホイールスタイルから変更されて上面の右手側に移動した。
従来の一眼レフEOSに慣れている人にはちょっと釈然としなさそうな気はするが、コンパクト化と操作性を考えると移動はしかたないところだと思う。
ちなみに、メイン電子ダイヤルは従来のゴム巻きの歯車タイプではなく、EOS Kiss Mなどに使われているローレット入りのタイプに変わっている。
サブ電子ダイヤルの中央に「MODE」ボタンがある。そうなのだ。あのむだに存在感をまき散らしているモードダイヤルがないのである。ワタシ的には、この事実だけで買う価値があると思う(おおげさすぎ)。
というのはいいとして、背面の右手側上部にある「〈 〉」みたいな操作部材「マルチファンクションバー」が新設された。
左右へのスライドと左右のタップの3つの操作が可能で、ここに撮影時はAF、ISO、ホワイトバランス、動画撮影、ピント確認など、最盛時は画像送りや機能のショートカットなどを設定できるらしい。
このへんは実際に使ってみないと評価はできないが、おもしろそうではある。
背面のボタン類はほとんどが右手側に集められていて、カメラを構えたままでも操作できるようになっている。「MENU」ボタンが左手側なのはおおいに気にくわないが、たぶんだけれど、「SET」ボタンに割り当てることができるだろうから、あまり心配しなくていいと思う(はずされたら泣くけど)。
ただし、電源スイッチの位置だけは納得しない。断固納得しない。
あと、グリップとマウントのあいだのスペースにボタンがないのも物足りない。プレビューボタンも見当たらないのである(スペック表にも項目がない!)。
5軸電子手ブレ補正とCanon Log対応の4K動画
動画は4K(3840×2160ピクセル)の30p。フルHDでは60p、HDだと120pまでとなる。
広いダイナミックレンジが得られるCanon Logを標準搭載しており、10bitでのHDMI出力に対応しているらしい。ワタシはよくわかりませんけど。
動画撮影時はボディ側の電子手ブレ補正(5軸)も利用でき、ISレンズと組み合わせるとより強力なコンビネーションISが可能となる。
また、RFレンズ使用時のみ、絞りの設定ステップを1/8段に変更できる。1/3段よりも細かく設定できるのがおもしろい。
露出モード「フレキシブルAE」を新搭載
「マルチファンクションバー」と並んで謎なのが、新しい露出モードの「Fv」モード。フレキシブルAEというらしい。プログラムAE、シャッター優先AE、絞り優先AE、マニュアル露出のすべての機能を1モードでカバーできるすごいものらしい。
どうして「らしい」なのかと言えば、実のところ、このモードがどういうふうに動作して、どういうふうに便利なのかがまったくわからないからだ。
うまく使いこなせれば超便利になりそうな気もする反面、よくわからないままうっちゃられる可能性もあると思う。
もうひとつの新操作部材が、RFレンズの「コントロールリング」だ。絞りやシャッタースピード、ISO感度などの機能を割り当てられる。
ニコンのZレンズもフォーカスリングをコントロールリングにして機能を変えられるようにしているが、キヤノンはフォーカスリングはそのままで専用の機能リングを追加してきたわけだ。
マウントとレンズ、アクセサリーのこと
レンズマウントはEFマウントに似たRFマウントを採用。内径は54mmでEFと同じ(ニコンのZマウントより1mm小さい)。フランジバックは公開されていないっぽいが、リーク情報では20mmとかだった気がする。
レンズ取り付け指標が、EFは「●」だったのがEF-Sでは「■」になり、RFでは「|」に変わった。
ボディと同時に発表されたのは、
RF 24-105mm F4 L IS USM
RF 28-70mm F2 L USM
RF 35mm F1.8 マクロ IS STM
RF 50mm F1.2 L USM
の4本。
発表会ではロードマップも一応見せたものの、来年以降に「F2.8 Lも出すよ」程度のネタしか出なかったらしい。そのへんは、ちょっとがっかりだった。
EFレンズを装着するためのマウントアダプターも用意される。
電子接点付き筒的存在の「マウントアダプターEF-EOS R」、コントロールリングを備えた「コントロールリングマウントアダプターEF-EOS R」のほか、差し込み式フィルターが使える「ドロップインフィルターマウントアダプターEF-EOS R」がある。
「ドロップインフィルターマウントアダプターEF-EOS R」は円偏光フィルター付きのと可変NDフィルター付きの2種類。合計4種類が選べる。
縦位置撮影機能も備えた「バッテリーグリップBG-E22」には、LP-E6N(またはLP-E6)×2本が装填可能で、撮影可能枚数が2倍に増える。また、「USB充電アダプターPD-E1」も付属している。
あ、そう言えば、発表会で誰か、マウント仕様は公開するのか質問したのかな。たぶん、ニコンと同じような答えになる気がするけど。
価格と発売日
品名 | 価格 | 発売日 |
---|---|---|
EOS Rボディ | オープン(237,500円) | 10月25日 |
RF 35mm F1.8 マクロ IS STM | 75,000円 | 12月下旬 |
RF 50mm F1.2 L USM | 325,000円 | 10月25日 |
RF 24-105mm F4 L IS USM | 155,000円 | 10月25日 |
RF 28-70mm F2 L USM | 420,000円 | 12月下旬 |
バッテリーグリップBG-E22 | 34,900円 | 10月下旬 |
USB電源アダプターPD-E1 | 13,000円 | 2019年2月下旬 |
マウントアダプターEF-EOS R | 15,000円 | 10月25日 |
コントロールリング マウントアダプターEF-EOS R | 30,000円 | 10月25日 |
ドロップインフィルター マウントアダプターEF-EOS R 円偏光フィルターA付き | 45,000円 | 2019年2月下旬 |
ドロップインフィルター マウントアダプターEF-EOS R 可変式NDフィルターA付き | 60,000円 | 2019年2月下旬 |
※価格はいずれも消費税別です。
おもなスペック
キヤノンEOS R | |
---|---|
発売年月 | 2018年10月25日 |
撮像センサー | デュアルピクセルCMOS |
有効画素数 | 3030万画素 |
ISO感度 | ISO100〜40000、L(ISO50相当)、H1(51500)H2(102400) |
ボディ内手ブレ補正 | なし |
ファインダー | 0.5型有機EL、369万ドット |
視野率・倍率 | 100%・0.76倍 |
アイセンサー | 内蔵 |
液晶モニター | バリアングル式3.15型TFT、210万ドット、タッチパネル内蔵 |
シャッター | 物理幕、電子先幕、電子シャッター |
シャッター速度 | 1/8000秒〜30秒、シンクロ1/200秒 |
高速連続撮影 | ワンショットAF:8.0コマ/秒、サーボAF:5.0コマ/秒 |
連続撮影可能枚数 | JPEG L/F:100枚、RAW:47枚(UHS-II) |
ファイルサイズ | JPEG L/F:8.4MB、RAW:31.3MB |
フリッカー低減 | 可能 |
オートフォーカス | デュアルピクセルCMOS AF |
検出範囲 | -6〜18EV(F1.2、ISO100) |
フォーカスポイント(測距点) | 5655点(十字キー選択時) |
動画記録画素数/フレームレート | 4K UHD/30p、フルHD/60p |
最大ビットレート | 480Mbps |
動画ファイル形式 | MPEG-4 AVC/H.264 |
最長記録時間 | 最長29分59秒 |
記録メディア | SDカード UHS-II対応(シングルスロット) |
電源 | LP-E6N(付属)/LP-E6 |
撮影可能枚数 | 370枚(なめらかさ優先設定時) |
大きさ | 幅135.8×高さ98.3×奥行き84.4mm |
重さ | 660g(電池とメディア含む)、580g(本体のみ) |
実売価格 | ボディ:256,500円前後(税込み) |
2018.09.23 一部製品の発売日が公表されたので修正しました。