しばらく更新できていなかったものだから、クロネコさんが運んできた箱の中身について書くのも久しぶりということになる。
箱に入っていたのはシグマのELECTRONIC VIEWFINDER EVF-11。フルサイズミラーレスカメラSIGMA fpとその多画素バージョンであるSIGMA fp Lに対応した外付けEVFだ。
もっとも、箱が届いたのはかなり前のことだし、EVF-11自体も発売されてからそこそこ時間が経っていたりもする。なので、正直言ってちょっとじゃなく今さら感があるのだけれども、放置しておくのも気が引ける。発売5年を経た今も売れ行きが好調といううわさも目にしたものだから遅ればせながら紹介することにした。
目次
ワタシ的にファインダーはカメラに不可欠の要素
さて、ワタシのごくごく個人的な感覚としては、ファインダーはカメラに欠かせない要素である。
MFの時代からずっとファインダーをのぞきながら撮ることに慣れきっているせいもあるが、ファインダーにはモニターにはないメリットがいくつかある。
- 画面に集中できる
- まわりの明るさに影響されない
- 手ブレを減らす効果がある
- 近視や老眼にやさしい
まず、ファインダーだと画面だけが見える状態で撮ることになるから、まわりの情報が目に入らない分画面に集中できる。
それから、ファインダーにはまわりからの光をさえぎる効果もあるので、光線状態などによって画面が見づらくなるわずらわしさがない。
このあたりはスマホで撮るのがあたりまえの世代には気にならないかもしれないが、ワタシ的にはやはりファインダーのほうが撮りやすいと感じるのだ。
それと、ファインダーだと両手と顔でカメラを支えられる。手で持つだけよりも安定した構え方ができるおかげで手ブレを減らす効果も期待できる。
ついでに書くと、近視と乱視と老眼をあわせ持つ身としてはモニター画面よりもファインダー像のほうがありがたかったりもする。
というような次第で、カメラにはファインダーがあってほしいんである。
fpの美点である小ささと軽さを損なわれるのが切ない
じゃあ、なんでfp使ってるんだ?と思われるかもしれないが、fpのようなカメラは完全無欠の別腹アイテムなので、これはこれでウェルカムである。
fpはもともとが最小限の要素以外を削りに削って小型軽量化を突き詰めたカメラである。足りないものがあってあたりまえだし、むしろ「ない」ことの粋を楽しむカメラなのだ。そこに外付けアクセサリーをあれやこれやと盛るのは野暮というものだろう。
実際、EVF-11を着けたfpは、幅は16cmほど、高さが10cmほどのボリュームになる。重さもバッテリーとSDカードを含めて536g。この数字はソニーのα7C IIを上まわる。
つまり、fpの最大の持ち味である小ささと軽さが損なわれてしまうんである。しかも、あちらにはあるボディ内手ブレ補正や可動式モニターもなしである。
かなりおもしろくない。
そういうのもあって、長いあいだEVF-11は見ないことにしていたのである。
理想的ではないが許容できなくはない大きさと重さ
fpらしい小ささと軽さを失うのは切ない。が、ワタシ的にカメラに必須の要素であるファインダーが用意されているのを無視しつづけるのもつまらない。
ものすごく悩ましいのをうだうだ考えた末に意を決してごにょごにょしちゃったのをクロネコさんが運んできてくれた。そういう次第である。
で、届いた箱の中身がこちらである。
正直言って、届いたばかりのころは見慣れていないこともあって、取って付けた感がものすごかったが、時間が経った今はこれはこれで…という気持ちになっている。
もちろん、もともとのfpに比べればボリュームも増しているし重くもなっているわけだが、持ち歩きが苦になるようなレベルではないし、重量バランスが気になるようなこともない。
ようするに許容範囲内である。
人によっては防塵・防滴でなくなるのが問題になるようだが、ワタシの場合はメインで使うのがContemporaryラインのレンズたちである。マウント部にゴムのシーリングがあるだけの簡易防滴仕様だ。
そのうえ、使い手のワタシの耐候性も低いから、カメラが濡れる機会はそんなにないはず。という目論見でいる。
映像表示の切り替えが手動なのが面倒くさいところ
ただ、残念なことに、アイセンサーが内蔵されていない。ファインダー表示とモニター表示を自動的に切り替える機能がないのである。映像表示の切り替えは、スライド式のスイッチ操作で行なう仕様なのだ。
今どきそれはちょっと…ねぇ。って感じではある。
2016年に発売されたsd Quattroの内蔵EVFにはちゃんとアイセンサーが組み込まれていた。それでいながら2021年発売のEVF-11がこの仕様というのにはおおいに釈然としない。
もっとも、なんの理由もなしに自動切り替えを捨てるのもおかしな話で、だからなんらかの小難しい事情があってのことに違いない。
と察することは可能だが、歓迎できるわけではない。不便なものはどうあがいたって不便なままである。
しかも、切り替えスイッチの場所が、カメラを持った状態では目に入りづらい側面なのも気になっている。
慣れてしまえは手探りででも操作はできる。が、もっと見やすい場所にスイッチがあればとか、カメラ側のボタン操作で切り替えられたらとかは考えてしまう。ないものねだりなんだけどね。
切り替え操作をなしにする方法として、ファインダーのみで運用するというのも試してみた。老眼対策にもなるかと思ってのことだが、メニュー操作や画像の再生のたびにいちいちカメラを構えてファインダーをのぞき込まなくてはならないのが思いのほか辛気くさくて早々に挫折した。
それから、固定リング(カメラに装着するためのネジを回すダイヤル状の部材の名称である)がゆるみやすい問題もあるが、こちらは対策のしようはないのでこまめにチェックして締め増すしかない。
追加されるメニュー項目について
せっかくなので、関連するメニュー項目についても触れておく。
EVF-11を装着したときだけ表示される「EVF設定」の中に「LCDへの自動切替」というのがある。オンにするとメニューを操作したときや画像の再生時に、自動的にファインダー表示からモニター表示に切り替わるようにできる。
つまり、撮るのはファインダー、見るのはモニター、というふうな使い分けが、スイッチ操作不要でやれるようになる。
らくちんでいいね。となりそうなところだが、ワタシ的にはファインダーをのぞきながら操作したいQSメニューや撮影モードの変更とかまでモニター表示になってしまう。なんだか、かゆいところがちょびっと残ったみたいな気持ちになる。なので、今のところは「切」にしてある。
それから「EVF設定」の「タッチ操作」も要チェックの項目だ。ここにある「タップ」と「ダブルタップ」を「入」にすると、それぞれ「フォーカスフレーム移動」と「LV拡大表示」が有効になる。
前者はタップやドラッグ操作でフォーカスフレームを移動させられるもの、後者は全画面表示からフォーカスフレームを中心にした拡大表示に切り替えられるものだ。
ただし「入」にすると、当然ながらモニターが電気を食う。そこのところが要チェックな理由。EVF-11装着時のバッテリーの減りが気になるなら、この2項目を「切」にしておくのがおすすめだ。
上向き90度チルトは中途半端だけどそれなりに便利
EVF-11の接眼部には、上向き90度までのチルト機構が組み込まれている。外付け式のEVFにはよくあるギミックだが、ワタシ個人はあまり好きではない。
チルト式はモニターも同じで、横位置で撮る分にはアイレベルからローアングルまで対応できて便利な一方、縦位置にはまったく無力だからだ。
「これは横位置(あるいは縦位置)だけでOK」と決めて撮るときはいいとして、横位置で撮ってから「念のために縦位置でも」となることもままある。ワタシの場合、チルト式のカメラでローアングルだったりすると一瞬でイライラMAXになれる。
まあ最近は、ネガティブなことを言うと嫌われるらしいから多少は前向きに考えるようにしているし、実際のところ、横位置だけでも十分にありがたい。
特にfpはモニターが固定式で、ローアングルや背の低い三脚での撮影で不便を感じていたのが、横位置だけでも便利になるのだから大助かりである。それに、縦位置にも対応可能なようにすると構造が複雑になって高価にもなるはずだから、チルト式にとどめておくのは妥当な判断だと思う。
ちなみに、EVF-11に使われている表示デバイスは0.5型で368万ドットの有機ELである。スペックとしてはすごくはないが、光学系をかなり頑張ってくださっているようで、倍率も高めで見え味もいい。のぞき込む目の位置が多少ずれてもボケたりにじんだりしないし、歪曲収差も感じない。優秀なファインダーだと思う。
結局、着けっぱなしで使うことになりそうな気が…
fpはファインダーがないからこそのシンプルさ、軽快さが持ち味のカメラだし、そこを大切にしたいなら素のまま使うのがいちばんだろう。お値段のことも別にしても、ファインダーが必要なら最初からEVFを内蔵したカメラを選んだほうが利口だろう。
そう考えたからこそ、これまでずっとEVF-11の存在に目をつぶりつづけてきた。
その一方で、カメラはファインダーをのぞいて撮るもんだよね、とも思っているので、着けたら着けたで「これよ、これ!」な気持ちにもなってしまう。
それに、ワタシ的には大きさも重さも許容範囲におさまってくれているので、ほぼほぼ着けっぱなしで使うことになるだろう。横位置だけでもローアングルがらくちんになるのもうれしいしね。
こんなことならもっと早くごにょごにょしちゃえばよかったなぁ…などと考えたりするあたり、なんかもうぐだぐだですみませんって感じである。