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そこはかとなくシグマブログ化が進行しているところにまた強力なのが送り込まれてきたものだから、今回もまたシグマのレンズのレビューである。
ブツは40mm F1.4 DG HSM Art。シネレンズとして開発をはじめた光学系を採用した新世代のArtレンズと言う。一眼レフ用は昨年11月に発売されていて、この3月にEマウントも追加された。とどいたブツはそちらである。
焦点距離から考えればあからさまに大きすぎるし重すぎるが、MTFデータを見るかぎり、それに見合う写りをするに違いない。
となると、大きさと重さ以外はべた褒めな記事になるのは目に見えている。なので、おひまな方だけ、もしくは沼な人だけごらんになるのがよいと思う。
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目次
大きくて重くて高性能がシグマArtのスタンダード
例によってサイズはでかい。最大径は87.8mmの太さ。Eマウントはフランジバックが短い分をレンズで補うので長さは157mmに伸びている。40mmという焦点距離から考えればいかにも普通ではない。
そしてもちろん重い。Eマウントの公称値は1,270g。前後のキャップとレンズフードをセットした状態での実測値は1,353gだった。体力の下り坂の下のほうにたどりつきそうなおっさんがひぃひぃ言うヤツである。
SGV以前の50mm F1.4 EX DG HSMが登場したときに、50mmでそれもF1.4なのになんでこんなにでかいんだ!とあきれた記憶があるが、あのレンズが最大径84.5×長さ68.2mmで重さ505g(SAマウントの数値)。その50mm EXがざっくり2本分である。
ニコンのフルサイズ一眼レフをお使いなら、AF-S 24-70mm F2.8 E ED VRをお持ちかもしれない。サイズはそれと同じぐらいで、さらにずっしりである。
誰だよ。こんなスペックのレンズにゴーサイン出したのは!!(って考えるとあの方の顔がぽんと浮かんでくるからヤバい)。
というのはさておき、最近のシグマのレンズは重さで性能が判断できるぐらいによく育っている。で、この40mm Artは1.3kg級。105mm F1.4 DG HSM Artに次ぐ重さである。重篤な沼人ならずともわくわくする重さである。
実際、ファインダーをのぞいたときの見え方から違う。
ああ、これはすげー写りをするレンズだぞ、というのが、ファインダー像から伝わってくるのである。
最初に50mm F1.4 DG HSM Artのファインダー像を見たときの印象もそんな感じだったけれど、40mm Artのはさらにそれを上まわる。
被写体の密度と言うか、「そこにそれがある」という感覚がとても濃い。そんな見え方をする。
α7系やα9ならどれかのボタンに「絞りプレビュー」を割り当ててみてもらいたい。
αはもともと実絞りライブビューのカメラなのだから絞り込んで被写界深度を確認する必要はないのだが、「絞りプレビュー」するとグリッドやAFエリアの枠線なども全部消えて、被写体だけが見られる状態になる。
それで見ると、なんだかとても艶っぽいなぁと思ってしまう。見ること自体が気持ちいいのだ。ただ被写体だけを見る行為を楽しめる性能を持ったレンズ。そういう気配がある。
あきらかに、ヤバいヤツである。
シャープさと生っぽさがあって色の濃い表現が持ち味
当然、仕上がりも素晴らしい。
絞り開放での画面中心部の解像力は、たぶん、今までのどのArtレンズよりも高い。四隅もほんの少しアマさがあるだけで、それも2段絞れば文句なしの写りになる。
という評価は有効4240万画素のα7R IIIで撮った画像をピクセル等倍で見ての話であって、2400万画素クラスのローパスフィルターあり機なら、たぶん絞り開放からばっちりなのではないかと思う。
ボケ具合ももちろんいい。
最近の高級タイプのレンズはだいたいみんなこんな感じなので、いい加減ばかのひとつ覚えみたいになりかけているが、前ボケも後ボケもほんとにきれい。
絞り開放のボケも、F4ぐらいに絞ったときのボケも、とにかく嫌みがなくて、ボケたものの形そのままにふうわりボケてくれる。ようするに、好き者にはたまらないボケ方なのである。
色のノリもいい。天気が悪い日のα7R IIIってこんなに強い色が出たっけ?と思うぐらいに色が濃い。α7R IIIだとファインダーで見ていてもそれがわかる。それが艶っぽく感じられるのかもしれない。
それでいて、天気がいいときでもごてごてに盛ったようにはならない。色に対する力加減がうまいのだろう。そんな気がしている。
やわらかいものをやわらかそうに写すのも得意なように思う。
猫のあごの下やほおのあたりのふわふわした細い毛が、いかにもやわらかそうに写る。ピクセル等倍よりさらに拡大して見ると、それこそ1ピクセルとか2ピクセルの幅の毛が細く細かく伸びている。その細い毛がやわらかそうに感じるのである。
それと、木の質感がいい。と言うか好みである。古びた木の板の濡れた部分のしっとりと少しぬるっとする感じと、乾いた部分の指紋が引っかかるかさついた感じの違いが目で見えるような、そういう見え方がたまらなくよい。
デジタルはもともと硬いものの質感を出すのは得意なように思う。だから、金属や石、プラスティックあたりはきれいに出やすい印象がある。
反面、やわらかいものも硬い表現になりがちな気がしている。シャープでくっきり描かれているのが、曲がらなさそう、痛そうな感じに見えてしまう。そんな傾向があるように思う。
そういうやわらかいもののやわらかさをそのままきれいに出してくれる。個人的な感想だけれども、そんな特性を持ったレンズだと思っている。
この焦点距離が目に合うなら重さを我慢する値打ちがある
いちばんの考えどころは40mmという焦点距離の微妙さかもしれない。
もう少し長い50mmは王道の標準レンズである。一方、もう少し短い35mmはこれも伝統的な広角レンズで、こちらも愛用者が多い。
単焦点レンズが好きな人なら、50mmか35mmのどちらかはすでに持っているのではないかと思う。両方持っているという人だって多いだろう。
そこに10mm違うだけの、あるいは5mm違うだけの40mmを追加する意味があるかどうか。
それと、標準域の焦点距離のレンズに1.3kgの重さを許容できるかどうか。
そのあたりは考え込んでしまう。
普通に考えたらしんどいレンズである。
体力的なおとろえを全身で感じているおっさんにとっては全力でパスしたい案件である。
しかし、写りは新世代のArtである。
1.3kgの重さに裏打ちされた、今までのArtとは違う写りを備えているのである。
見すごしていいのか、と言われたら迷ってしまう。
ワタシなら、このレンズは1本勝負で使う。
なにしろ体力的にこの重さはつらい。ほかのレンズを持っていたら、そちらしか使わないんじゃないかという気しかしない。
だから、やるならこのレンズ1本だけで撮り歩くスタイルだろうと思う。
歩き慣れた街の表情を、普段と少し違う焦点距離で撮る。
写りは絶品なのだ。
楽しくないはずはない。
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