シグマさんのご好意で発売ちょい前の56mm F1.4 DC DN Contemporaryをお借りできたので、取り急ぎの実写レポートをお送りする。
かなり以前から予告されていたミラーレスカメラ用の中望遠レンズ。2018年秋のフォトキナで正式発表された。発売は11月22日。ソニーEマウント(APS-Cサイズ)とマイクロフォーサーズ用が用意される。
[kanrenc id=”1771″ target=”_blank”]↑マイクロフォーサーズ用の試用レポートはこちらです。
目次
ポチップ
ポチップ
Contemporaryラインに属するF1.4固定の中望遠レンズ
APS-Cサイズでは84mm相当、マイクロフォーサーズには112mm相当となる中望遠レンズで、標準系の30mm F1.4 DC DN Contemporary、広角系の16mm F1.4 DC DN Contemporaryにつづく第3弾となる。
写真左が30mm、右が16mm(この2本はマイクロフォーサーズ用)で中央のいちばん小さいのが新しい56mm。これでDC DN Contemporaryシリーズが完成となる。
ちなみに、レンズ名に含まれる「DC」はAPS-Cサイズに対応(つまりフルサイズには対応しない)、「DN」はショートフランジバックのミラーレスカメラ用をあらわす。
一方、「Contemporary」は小型軽量お手ごろ価格。でも画質は文句なし、という路線をねらったシリーズで、レンズ単体でめいっぱいの高性能を目指したArtラインと違ってカメラによる電子補正を前提にした設計となっている。
レンズ構成は6群10枚。30mmや16mmに比べるとわりとシンプルな構成で、素直な描写が得られるのではないか、というのが実写前の印象だ。
色収差を抑えるのに役立つSLDガラスレンズを1枚、球面収差などを低減する効果の高い非球面レンズを2枚採用している。
大きさは最大径66.5×長さ59.5mm。30mmの最大径64.8×長さ73.3mmに比べて少し太めで少し短めのころんとしたプロポーション。重さは30mmより15g重いだけの280g。体感的にはほとんど同じだ。なお、数字はすべてソニーEマウント用の公称値だ。
価格は税込み61,560円。大手量販店だと税込み48,600円ぐらいで手に入る。
絞り開放の四隅以外は申し分のないシャープさ
カメラはカミサンに借りたソニーα6300を使用した。有効2420万画素でローパスフィルターあり仕様である。
まずは定番(?)の壁を撮ってみる。絞り開放から最小絞り(F16)まで1/3段ずつ絞って解像感や周辺光量なんかもチェックしてみた。
結果はMTFのデータからだいたい予想はできていたが、思ったとおりに気持ちよく解像する。
画面中心部は絞り開放から見事なキレ味で、F2.8ぐらいまでは絞るほどにシャープさが増していく。窓枠の凹凸の感じ、奥行き感もF2.8からF4ぐらいに絞ったほうがよく出る。
これが画面周辺部までずうっとつづく。四隅だけは少し落ちる。その四隅もF4に絞れば良好になるし、F5.6まで絞れば画面全体が均一に高画質になってくれる。
中心から四隅までの距離が11mmぐらいのマイクロフォーサーズなら周辺部がカットされることになるので、絞り開放から全域高性能という評価になるのではないかと思う。
周辺光量低下はあまり大きくなくて、1段絞ればあまり目立たなくなる。F4まで絞れば気にならなくなるはずだ。
歪曲収差はわりとはっきりとしたイトマキ形。カメラの「レンズ補正」の「歪曲収差」を「オート」にするとちゃんと補正してくれる。
絞り開放での画面四隅と電子補正前提というのがArtとContemporaryの違いなわけだが、その違いのおかげでこのサイズとお値段を実現できているわけで、体力の落ちたおっさんにはとてもありがたい。
まあ、最近はArtレンズに鍛えられているおかげで1kgのレンズがあまり重く感じられなくなってきているので、そのあたりも含めてシグマには感謝である。
思いついてα7R IIIとも撮り比べてみた。APS-Cサイズクロップだと1782万画素記録になるが、ローパスフィルターレスなのでキレはいいかも、と思ったからだ。
見た感じ、ほとんど差はないように思う。なので、α7R IIIでお気楽に撮りたいときなんかにはよいかもしれない。
寄ってもシャープなうえに周辺光量も豊富でボケもきれい
近接域でもシャープさは変わらない。
シリーズ第1弾の30mmは絞り開放の画像をピクセル等倍で見ると少しふわっとした描写になるが、こちらは開放でもしっかり解像してくれている。
絞っていくとキレ、コントラストともに上がっていって、F2.8あたりからの立体感の出方がまたきれいでよい。
ボケは前後ともになめらかで硬さやクセは感じない。
絞り開放ではもちろんふわとろ系で、絞っていくにつれてボケていたものの形がほんのり見えてくる。絞り込んだカットから見ていくと、被写体の形が素直にボケていくのがわかる。これも好印象だ。
コントラストの高いエッジが重なり合うようなシーンでは、ボケが存在感を主張するようになるかもしれないが、はっきりとした二線ボケにはならなさそうだ。それほどディープに使い込んだわけではないが、ボケがわずらわしく感じられるカットはなかった。
中距離域でも近接域でもボケは良好で、ピクセル等倍で見ても全画面で見ても心地がいい。
点光源をうんとボカして撮ってみたが、画面の端に近いあたりでもきれいな円形を保ってくれている。イルミネーションなどを撮るのにはぴったりなレンズだ。
なお、絞りは9枚羽根の円形絞りで、F2まではきれいな丸ボケとなる。F2.2からわずかずつ多角形っぽさが出てくるが、F2.8までならまずまずだと思う。
レンズ本体だけでなく付属のフードも進化している
個人的におもしろいなぁと思ったのが付属のレンズフード。お手ごろ路線のレンズとは思えない、ちょっと複雑な構造になっている。
同じシリーズの30mmのはとてもシンプルな形状で、その分ややズレやすい印象がある。ワタシが持っているマイクロフォーサーズ用のは発売されてすぐの個体なので、その後改良されている可能性はあるけどね。
それが16mmのは固定用の爪の部分をバネ構造にするための溝が切られるなど形状が複雑化していて、そのおかげかズレにくくなった感がある。花形フードでズレると悲惨なことにもなりかねないので、こうした工夫はありがたい。
で、新しい56mmのはと言うと、バヨネット部分が別パーツになっていて、フード本体にネジで固定してある。しかも、普通に着ける用と逆向きに着ける用の2列のバヨネット爪があるという凝った構造なのだ。
まじめな話、Contemporaryラインの付属品にここまでこだわっちゃうのって、コスト的に大丈夫なのか、と思ってしまう。でも、ここまでやっちゃうシグマだからこそ、ほれてしまうのだよねぇとも思う。
弱点はライバルの撒き餌レンズがお安いこと
正直、写りだけ見ている分には文句なしのArtクオリティーだし、細かい部分へのこだわり具合もArt級。そんなすごいレンズに仕上がっているこの56mmの弱点はお値段かもしれない。
APS-Cサイズ向けとは言え、F1.4の明るさで画質はArtに比肩する。と考えれば税込み5万円弱の実売価格はむしろボーナスプライスだ。
が、このクラスは純正に手ごわい撒き餌レンズが存在する。
なにしろ、ソニーにはE 50mm F1.8 OSS(税込み実売26,800円程度)があるし、マイクロフォーサーズにはオリンパスM. 45mm F1.8(同29,900円程度)やパナソニックG 42.5mm F1.7(同36,000円程度)がある。
明るさではシグマ56mmに譲るが、実売価格が3割、4割安いとなれば目も奪われる。そのことが、このレンズの「強いて言えば」の弱点だ。
あと、手ブレ補正の問題もある。
手ブレ補正内蔵ボディと組み合わせるならいいが、α6300みたいな非搭載ボディだとちょっとしんどい。一方、ソニー50mmとパナソニック42.5mmは手ブレ補正内蔵。この差も悩みどころとなる。
とは言うものの、写りは掛け値なしに素晴らしいし、純正撒き餌レンズと比べなければお値段もけして高くはない。
なんだか、ほめっぱなしな記事になってしまったのだけれど、まじめにほめるところしかないレンズなのだからしようがない。なんにしてもお財布に無理をさせる価値のある1本であるのは間違いない。
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