さて、今さら感はあるけど、オリンパスE-M1 Mark IIの新ファームウェアについて書いておきたい。
ちなみに、最新バージョンは3月8日公開のver. 2.1で、これにはパナソニックのDG ELMARIT 200mm F2.8でC-AFが正常に動作しないという不具合の修正がなされている(ver. 2.0で「対応」って書いてたのに、ちゃんと対応しきれてなかったわけだ)。
新ファームウェアで変わったところはいろいろあるが、ワタシ的にはスモールAFターゲットと、アートフィルターのブリーチバイパスの追加。それからC-AFの性能向上あたりが目玉で、ほかにもちょっぴり(もしかしたら、普通の人にはまったく関係ないかもしれないこと)の改善があった。そのへんをくどくどと書いていこうと思う。
目次
測距範囲の狭いスモールAFターゲット
E-M1 Mark IIの残念ポイントのうち、わりと大きなのがスモールAFターゲットがなかったことだ。
「AFターゲット」というのは測距点(もしくは画面上に表示される測距点のフレーム)を指すオリンパス語で、「スモール」は普通に小さいことを意味する。
普通サイズのAFターゲットは、11×11配置の計121点あって、画面の左右80%×上下75%をカバーしている。モニターに定規を当ててはかったところ、1点あたり、だいたい左右が4mm、上下が2.8mmほどの長方形だ。普通はこれで問題ないが、たまにうんと小さい(あるいは細い)被写体のときに、ピントが背景に抜けてしまうことがある。
それをどうにかしてくれるのがスモールAFターゲットだ。
E-M5 Mark IIとかには搭載されていて、なのに、E-M1 Mark IIにはなかったものだから、とても落胆したし、ワタシ以外にも残念がっている人はたくさんいた。
聞いたところによると、像面位相差検出だとAFターゲットのサイズを小さくするのが難しいらしいとのことだった(AFターゲットの範囲内にある位相差検出画素の数の問題ではないかと想像している)。それに、E-M1 Mark IIは測距点数が121点(E-M5 Mark IIは81点である)に増えて、そのぶん、ひとつひとつのAFターゲットが小さくなっていることもあって、スモールAFターゲットの搭載は見送られたのだそうな。
なるほどなぁ、とは思いはするが、こちらとしては、これまでスモールに慣れていたのがなくなっちゃったものだから、これが選べないのはおもしろくない。でまあ、そういう要望が多かったということだろう、ver. 2.0でめでたく搭載されることになった。
こちらは一辺がだいたい2.5mmほどの正方形。面積で考えると、通常のAFターゲットの56%ほどになるから、だいぶ小さい。そのぶん、AFターゲット同士のあいだに隙間が空くことにはなるが、ピンポイントで被写体をとらえられるわけだし、ピントが背景に抜ける心配も少なくなる。実質的にどれぐらいよくなったか、というのはよくわからないけれど、気持ち的に安心感、信頼感が増したのは間違いない。
ただし、ピント検出をやる範囲が狭くなるぶん、使える位相差検出画素の数も少なくなるのだから、AFが迷ったりすることが増える可能性もなくはない。なので、シーンに応じて、つまり、静止した細かい被写体にはスモールAFターゲット、同じ動かない被写体でもレスポンスを重視したい撮影には通常サイズのAFターゲット、というふうな使いわけを、もしかしたら考えないといけないかもしれない。というのは頭の隅にでも置いておいたほうがよさそうに思う。
新アートフィルター ブリーチバイパスの追加
いわゆる「銀残し」をシミュレートしたもので、E-M1 Mark IIの発売当時にはなかったものだ。E-M10 Mark III(2017年9月発売)に初めて搭載され、そのついでみたいな感じで、OLYMPUS Viewer 3でE-M1 Mark IIのRAWにも適用できるようになっていた。それが、ファームウェアver. 2.0でカメラにも内蔵されることになったわけだ。
仕上がりイメージを想像しながら撮るよりも、EVFなりモニターなりで効果を見ながら撮るほうが画づくりを考えやすいのはあたりまえで、普通に撮って現像ソフトで適用するよりは、カメラ内蔵のほうがいいのは間違いない。
E-M1 Mark IIの場合、オーソドックスなブリーチバイパスIと、コントラストを抑えてシャドウに青みを載せて、さらにピントまでアマくした感じのブリーチバイパスIIとで露出の与え方にずいぶん差がある。ワタシ的には、ブリーチバイパスIは1段ぐらいアンダー目に振ったほうがよさそうで、一方のブリーチバイパスIIは少しオーバー気味でもいいかな、というぐらいに違う。と考えると撮影時処理のほうが有利そうに思える。
そのあたりも含めて、カメラ内蔵になったのはありがたいと思う。
C-AFの性能の向上と親指AF時のAF動作のレスポンスを改善
新ファームウェアではC-AF(コンティニュアスAF)の性能が向上していると言う。が、正直、ワタシはオリンパスのAFにはあまり期待していなくて、わりと眉に唾をつけて眺めていただけだった。
が、試してみたらかなりいい。よくなってる。年明けに特選街の特集記事(一眼レフとミラーレスカメラの新しめな14機種を実写テストした)でやったときよりも、AF追従連写時のスピードダウンの幅が小さくなっているし、ピントの歩留まりもよくなっている。
もちろん、そのときとはレンズも違うし、撮影するポイントも違う。ので、スピードとかも違っているから、厳密には比べられないが、公称値の18コマ/秒(ピントが追従する静音連写Lモードの最高速である)に対して、旧ファームウェアのボディは14コマ/秒ぐらいにスピードが落ちていて(セッティングが同じじゃないんで、そのへんの影響もあるかもしれん)、かつ1/2倍表示で「まあ、ボケてないことにしようか」と思える画像の率が7割ぐらいだった。
それに対して、新ファームウェアのマイE-M1 Mark IIは、おおざっぱに見た感じでは17コマ/秒ぐらいは出ているし、1/2倍表示で見て「これはアマいよなぁ」と判断した画像の率が5%ぐらいにまで下がっていたのだ。
繰り返すけれど、条件は同じではない。だから、単純な比較はできない。とは言え、びっくりしていいぐらいの進化は間違いなくあった。まじめにすごい。素晴らしい。
で、もうひとつの親指AF時のAF動作のレスポンスの向上のほうはと言うと、もうちょっとよくわからない。というのが正直な印象だ。
今までだって、そんなに悪いとは感じてなかったし、なので、新ファームウェアになってそんなによくなった感じもない。
まあ、旧ファームのボディと比べてみれば違いがわかるかもしれないけれど、そのへんまったく考えなしでアップデートしちゃったものだから判断がつかない。違いがわからない男でごめん。そんな感じである。
プロキャプチャーモードの強化
シャッターを切る前の瞬間も記録できるプロキャプチャーモードはE-M1 Mark IIのセールスポイントのひとつだが、これが強化されているのも見逃せない点だ。
今までは、全押し前の画像を最大14枚まで残せる仕様だったが、これが35枚に増えた。18コマ/秒なら約2秒ぶん、60コマ/秒で約0.6秒ぶんという数字で、18コマ/秒なら、「あ、いいな」と認識してから右手人さし指が動くまでに2秒かかるような鈍くさい人でさえシャッターチャンスを逃がす心配がなくなったよ、ということだ。
実際には、バッファメモリーの容量の問題もあるので、全押し前の画像を多くしすぎるのもあぶない気がする。ワタシのセッティングだと、静音連写Lでの連写可能枚数は、JPEGのL F(ラージサイズ、ファイン画質)で80枚ぐらい、RAW+JPEG(L F)やRAWのみだと50枚強といったところ(適当計測なので誤差はかなりあると思ってください)なので、全押し前ぶんに35枚割り当てると、全押し後のぶんがRAWだと15枚しか残らないことになってしまう。
それに、毎回全押し前の2秒ぶんが必要なわけでもない。動きものを撮るのに慣れている人なら0.2秒とか0.3秒ぶん(枚数になおせば4〜6枚程度)、慣れていない人でも0.5秒とか0.6秒ぶん(9〜11枚ぐらい)あればだいたいなんとかなるのではないかと思う。
もちろん、そのあたりは経験とか割り切りとかで数字を変えていくべきだと思うので、あくまでワタシ個人の感覚、意見だと思っていただきたい。
問題は、そのシャッターチャンスにちょうどいいフレーミングを予測することが難しいこと。このへんは、やっぱり経験を積むしかない部分で、普段動きものを撮らないワタシのような人間の場合は、わざと引きぎみに撮っておいてトリミングで対応するとかのほうが手っ取り早いのかなぁ、とも思っている。
それから、半押ししてプリキャプチャー(全押し前の画像を記録できる状態)が開始されたことを示すアイコンが画面に表示されるようになったのも改良点。
プリキャプチャー中は実絞りになるし、画面の動きもちょっと変わる感じがするし、手ブレ補正の作動音とかで「あ、動いてるな」感はあるから、アイコンが出なくても気配で察知はできた。とは言うものの、見た目でわかるほうが安心感は持てるし、いいと思う。
ただ、個人的には、静音連写H時にバッファフルになったかどうかがまったくつかめないのをどうにかしてもらいたいと思っている。静音連写Lはブラックアウトがあって、連写速度が落ちるとすぐにわかるからいいが、静音連写Hのときは60コマ/秒で切れているのか、あるいはバッファがいっぱいになって連写速度が落ちているのかが、画面からは判断できないのが不便だと思うのだが、世間ではそんなに気にしないものなのか、というのも含めて気になっていたりする。
あと、プロキャプチャーの対応レンズが一応増えていることもある。が、純正以外のマイクロフォーサーズレンズやフォーサーズレンズは最高60コマ/秒のHモードのみの対応。電子接点のないレンズはLモードも使えることになっている。ようは、ピント固定の場合にかぎられるわけだ。
だからたとえば、鳥が飛び立つ瞬間を、とか、そういうシーンには役に立つだろうけれど、動く被写体をC-AFで追いつつ、というようなケースには使えない。
そのへんは少々物足りないところではあるが、まったくだめだった今までと比べれば、一歩前進したと言っていい。
フリッカースキャン
蛍光灯や水銀灯、LEDなどのちらつき(フリッカー)を軽減できる機能が追加されたのも新しいところだが、これがまた使い方がややこしい。と言うか面倒くさい。
まず、使える設定がかぎられている。使えるモードはS(シャッター優先AE)またはM(マニュアル露出)のみで、静音撮影かプロキャプチャーかハイレゾショットだけ。つまり、シャッター速度を自分で決める撮影モードで、かつ電子シャッター使用時限定ということ。
というのはいいとして。
この機能をオンにすると、画面にシャッター速度が表示されて、上下ボタンやフロントまたはリアダイヤルで数値が変えられる。で、表示されるのが「256.1」とか「257.2」とか「258.3」とかの見たことがない数字ばかりだったりする。確認してみたところ、上は「7634」、下は「50.0」まで設定できる。
つまり、シャッター速度をいろいろ変えて、ちらつきやスジ状の明るさのムラがなくなったところで撮影しなさい。そういうわけだ。
電源周波数が50Hzの我が家の場合、シャッター速度が「250」ぐらいのときは盛大にちらつきが見えるのが「100.0」や「50.0」にするとちらつきがなくなる。それが画面で確認できるのは便利と言えば便利だ。キヤノンとかの、明滅する光源の輝度が最大になるタイミングでシャッターを切る方式はややこしくない反面、明滅周期が100Hzまたは120Hz(電源周波数が50Hzまたは60Hz)の光源にしか対応していない。
その点、オリンパスのフリッカースキャンはシャッター速度の設定範囲が広いぶん、光源の明滅周期への対応範囲が広い。周波数が高い照明でもフリッカーレス撮影ができるのは強みだろう。ただ、設定が辛気くさいのはほんと、ねぇ、って感じではある。
そのほか
深度合成の対応レンズにM. ED 12-100mm F4 IS PROが追加されたとか、再生時に拡大表示に切り替えたときの倍率を指定できるようになったとか、ボディ内フィッシュアイ補正機能とか、ほかにもいくつか新機能がある。
ver. 2.0でパナソニックのDG ELMARIT 200mm F2.8への対応をやって、なのにC-AFがちゃんと動かなかったらしくてver. 2.1が出てきたのはおいおいって感じだったけど。
あと、たぶん、小さいバグとかも修正してる。ワタシのセッティングだと、スーパーコンパネ上でドライブモードを切り替えるときの動作が逆転してしまっていたのだが、これがver. 2.0でなおってた。
たしか「ダイヤル機能」の「Menu」を前後入れ替えにしていて、さらに「ダイヤル方向」の「露出設定」を「ダイヤル2」に変えていたのが原因だったと思うが、普通はダイヤルを左から右へと回す操作で「1枚撮影」「連写H(高速)」「連写L(低速)」「セルフタイマー」の順に変わるのが(連写/セルフタイマー/HDRボタンを押して操作するときはこの動作になる)、なぜか反対方向に候補が切り替わっていく。ファームアップする前はそういう状態だったのが、ver. 2.0でこっそり修正されたっぽい。まあ、ワタシ的には、わぁい、って感じである。
こんなふうに、告知にない項目もあったりするので(この手の小さい問題については、どのメーカーもわりと静かに対処するケースが多い)、ファームウェアのアップデートは、よほどの事情がないかぎりはきちきちっとやっておいたほうがよいのである。
オリンパスの記事をありがとうございます。OM-D EM-1 IIIとE-PL8のユーザです。
レンズは12-40mm F2.8、40-150mm F2.8、100-400mm F5.6-6.0まで揃えたあと、Canon EF100mm F2.8Macro USM、EF400mm F5.6 USMなどを使ってマクロ、星景、飛び物などを撮影しています。
マイナーなボディですから情報が少ない中で、このような記事を読ませていただくと嬉しくなります。
どうか、これからもオリンパスの記事をよろしくお願いします。