待ちに待った新ファームウェアのおかげでワタシのα7R IIIにも動物の目に対応した瞳AFが加わった。
おかげで猫撮りがずいぶんはかどるようになった。のはいいが、運用上ちょっとなぁ、と思えるところもあって、いまいち便利になり切れていない感が残っていた。
でまた、あれこれいじっているうちに、かなりよさげなセッティングを思いついたので書いておくことにする。
ポイントは「押す間カスタム設定呼出」機能を使ってワイドエリアの瞳AFの組み合わせをカスタムボタンに割り当てよう、ということなのだが、これだけだとピンとこない人もいるかもしれない。ので、しばしおつきあいいただきたい。
目次
ファームウェア3.00で動物対応の瞳AFが追加された
さて、これまでの瞳AFは、いずれかのカスタムボタンに機能を割り当てて、そのボタンを押したときだけ瞳AFが作動する方式だった。
どうしてそういうふうにしているのかは知らないが、常時作動させられない事情があったのだろう。シャッターボタン半押しなりAF-ONボタン押しなりのオーソドックスな操作で瞳AFが使えない仕様は、ワタシ的には面倒くさいものだったわけだ。
それが新ファームウェアでシャッターボタン半押しやAF-ONボタン押しでも利用できるようになった。それだけでもポートレート好きにはうれしい進化だと思う。
もちろん、カスタムボタンに瞳AFを割り当てることもできるので、従来どおりの使い方を好む人にも不便がないようになっている。こういうのも地味にいい点だと思う。
それに加えて一部ではあるが、動物の目にも対応したというのがすごい。まさに新ファームウェアの目玉である。
ワタシは人物は撮らないが猫は撮る。室内猫なのでどうしても絞りは開き気味、と言うか、ほとんど開放オンリーで撮っている。被写界深度が激薄なシグマ135mm F1.8 DG HSM Artとかの絞り開放で、α7R IIIのピクセル等倍で見ても文句なしのガチピンで目に合わせるのはなかなかに苦労がいる。
それが瞳AFを使えばボタンを押すだけで画面内の猫の目にピピッとピントを合わせてくれる。フォーカスエリアを動かす手間がいらないうえに、猫が動いてもちゃんと追いかけてくれる。ほんと涙が出るぐらいありがたいことなんである。
目が検出できないときに起きる問題がある
ただし、便利なのは目が検出できているときだけ。目が検出できない条件では問題ありだ。
と言うのは、瞳AFが選択したフォーカスエリアの範囲内でしか働かない仕様だからだ。
ワイドやゾーンをメインで使っている人はいいのだろうが、ワタシはピンポイントで狙った位置にピントを合わせたい人なので、フレキシブルスポットのSサイズを常用している。
これだと、目に重なるフォーカスエリアを選択しないと瞳AFが使えない。瞳AFを利用するために目に重なるフォーカスエリアを選択しないといけないのである。ぶっちゃけ、瞳AFという機能の存在意義自体がぶっ飛んでしまうわけだ。
だから、猫を撮るときにはフォーカスエリアをワイドに切り替えることになる。
ここまではいい。厄介なのはここからだ。
問題は目が検出できないときである。
フォーカスエリアがワイドで目が検出できないと、あたりまえの話だが、普通のワイドエリアAFになる。
α7R IIIのAFは主要な被写体であろうと思われるひとかたまりの像の中の距離が近い部分にピントを合わせる習性があるらしく、猫の腹だとか尻だとかにピントを合わせやがるんである。
背中を向けて座っている猫が顔だけこちらに向けているときには目にピントが合う。ばっちり合う。素晴らしく合う。
が、目が検出できなくなった途端に尻ピンである。
後ろ頭とか耳に合わせてくれるならまだしも、尻だけシャープに撮れてもうれしくない。
カスタムボタンでのフォーカスエリア切り替えを試してみた
尻ピン写真が全部だめとはかぎらないが、普通は避けたいことのはずだ。数百枚のうちの1枚とかならまだしも、後ろ姿が全部尻ピンなのはやはりいただけないのである。
それに尻ピンだと顔はボケているから、猫がこちらを向いたときにピントが合うまでに時間がかかるし、ボケた状態だと目も検出しづらいはずだから二重によくない。
ので、C1(カスタム1)ボタンに「再押し登録フォーカスエリア」というのを割り当てて、登録フォーカスエリアにはワイドを設定する。というセッティングを試してみた。
こうしておくと、フレキシブルスポットのSサイズとワイドエリアの瞳AFをC1ボタンを押すだけでぱぱぱぱっと切り替えできる。
これで、猫がこちらを向いているときはC1ボタンを押してAF-ONボタンを押せば目にピントを合わせてくれるし、あちらを向いたらC1ボタンを押してフレキシブルスポットで後ろ頭なり耳鳴りにピントを合わせようという作戦である。
とまあ、こんなふうにボタンひとつで2種類のピント合わせ方法を使い分けられる。こういうところは便利にできている。悪くない運用法だと思う。
ただ、C1ボタンはシャッターボタンに当てている人さし指を手前側にくにっと曲げないと押せない位置なものだから、頻繁に操作するにはもうひとつ感がある。
C1ボタンの隣のC2ボタンはもう少し押しやすいが、こちらにはピント拡大を割り当てている。これも頻繁に使う機能なので譲りたくない。
ワイドエリア+瞳AFの組み合わせをボタンに設定する方法
じゃあどうしよう、ってあれこれ考えてたどり着いたのが、「押す間カスタム設定呼出」を使う方法だ。
「押す間カスタム設定呼出」は設定した機能の組み合わせを一時的に呼び出せるもので、使い方については「ソニーα7R IIIでAF-Cモードのまま「ピント拡大」する方法を見つけたのだ」という記事に書いたのでそちらを参照していただきたい。
[kanrenc id=”1234″ target=”_blank”]さて、「押す間カスタム設定呼出」に設定するのは、
- フォーカスモード:コンティニュアスAF
- フォーカスエリア:ワイド
- AFオン:する
の組み合わせ。これをマルチセレクターの中央ボタンに割り当ててみた。
そうすると、マルチセレクターの中央ボタンを押すと一時的にフォーカスエリアがワイドに切り替わってAF-CモードでAFオンになる。
つまり、マルチセレクターの中央ボタンを押すだけで検出した猫の目にピントが合ってくれる。AF-Cモードなので猫が動いてもボタンを押しているあいだはずっと追いつづけてくれるんである。
フォーカスエリアがフレキシブルスポットのSサイズのまま切り替え操作なしで、である。
3つのボタンで3種類のAFが使えて便利なのだ
「ソニーα7R IIIでAF-Cモードのまま「ピント拡大」する方法を見つけたのだ」をお読みいただいた方にはおわかりだろうが、AF-ONボタンには別の「押す間カスタム設定呼出」で「フォーカスモード:コンティニュアスAF」と「AFオン:する」の組み合わせを設定してある。
そうすると、AF-ONボタンではフレキシブルスポット、マルチセレクターの中央ボタンではワイド+瞳AF、という2種類のAFが使い分けられる。
それに、AF-ONボタンとマルチセレクターは位置的に近いので、機能を使い分ける際にも指の移動量は小さくてすむ。C1ボタンのような押しづらさもないので指の負担も少ないはずだ。
ちなみに、AELボタンには通常のAFオンを割り当ててあって、普段のセッティングはフレキシブルスポットのDMF(ダイレクトマニュアルフォーカス=シングルAF作動で合焦後にMF操作が可能になる)にしてある。
なので、3つのボタンで、
- フレキシブルスポットのAF-C
- ワイド+瞳AFのAF-C
- フレキシブルスポットのAF-S(拡大対応)
の3種類のAFが使い分けられるというわけだ。
この状態だと本来は同時利用できないはずのAF-C動作とピント拡大、フレキシブルスポットと瞳AFが共存できて、拡大中のAFも行なえる。
装着しているレンズがメカニカルフルタイムMFが使えるレンズ(70mm MACRO ArtをのぞくシグマのArtレンズなど)はフォーカスリングをまわすだけでMF操作が可能。
純正Eマウントレンズなどの電子式フォーカスリングのレンズの場合はフォーカスモードをMFにしておけばフルタイムでMFできる。AF作動抜きでMF操作が可能なのでDMFより便利だ(ただし、拡大AFは使えなくなる)。
あと、追尾AF(AF-Cモードかつ「顔/瞳AF設定」の「検出対象」が「人物」でないと選択できない仕様である)は今のところ不可である。こちらはカスタムモード(モードダイヤルの1、2、3ポジション)に機能のセットを登録しちゃえば利用できるので、必要ならそちらでやってもらうのがいいだろう。
後ろ姿対応の被写体認識機能も欲しいぞ
さて、今回もそこそこ長くなってしまったので収拾がつくうちにまとめておく。
普段はフレキシブルスポットを撮っていて、猫撮りはワイドエリアで瞳AFを使いたい、というのであれば、マルチセレクターの中央ボタンに「押す間カスタム設定呼出」を割り当てる。
「押す間カスタム設定呼出」の内容は「フォーカスモード:コンティニュアスAF」「フォーカスエリア:ワイド」「AFオン:する」の3つ。ほかの項目は全部チェックをはずす。
これで、目が検出できる状態ではマルチセレクターの中央ボタンを押せば、あとは優秀な瞳AFがだいたい文句なしの結果を運んできてくれる。
猫がそっぽを向いたらAF-ONボタン押しでフレキシブルスポットAF。自分でフォーカスエリアを選択できるから尻ピンや腹ピンは避けられる。
なんかもう、ワタシ的にはばっちり仕上がった感がある。
本音を言うと後ろ姿や横顔の猫も被写体認識して頭(耳でもいいが)にピントを合わせられるようになるとさらにばっちりなのだが、そのあたりはソニーさんの頑張り次第かなぁと思っている。