しばらく前から告知されていたニコンの最新フルサイズミラーレスカメラが、本日(8月23日)にようやくお披露目となった。
とりあえず、今の時点でわかっていることをまとめてみた。
目次
裏面照射型CMOSセンサーと新エンジンEXPEED 6
Z7、Z6とも撮像センサーは裏面照射型CMOSセンサー。Z7は有効4575万画素でローパスフィルターレス仕様、Z6は有効2450万画素でローパスフィルターあり仕様のようだ。
このへんは一眼レフのD850とD750(こっちは裏面照射型ではない)に似た感じ。ただ、お値段的にはD850が発売当初で税込み40万円、D750は税込み23万円程度だったから、ミラーレス化しつつぐっと価格アップになっている。
画像処理エンジンはどちらも新型のEXPEED 6を搭載。新しい「ミドルレンジシャープ」というシャープネス調整機能が追加されたほか、「ドリーム」「モーニング」「ポップ」「サンデー」「ソンバー」「ドラマ」「サイレンス」「ブリーチ」「メランコリック」「ピュア」「デニム」「トイ」「セピア」「ブルー」「レッド」「ピンク」「チャコール」「グラファイト」「バイナリー」「カーボン」の20種類の「クリエイティブピクチャーコントロール」が搭載。名前から受ける印象としては、オリンパスのアートフィルターのような機能と思われる。
大注目は5.0段の効果を持つ5軸のボディ内手ブレ補正の搭載だ。専用のZレンズはもちろん、一眼レフ用のレンズでも補正可能だ(ただし、VR非搭載のレンズの場合はZレンズよりも効果は落ちるとのこと)。
Z7は493点、Z6は273点ハイブリッドAFを搭載
AFは像面位相差AFとコントラストAFを併用するハイブリッド。Z7は493点(左右29×上下17点)、Z6は273点(左右21×上下13点)のフォーカスポイントを持ち、画面の縦横約90%をカバーする。
Z6のほうがフォーカスポイントが少ないのは、画素数が少ないぶん、画質への影響が大きくならないようにということだろうが、Z6は高速連写が可能なのが売りになることも考えると、この数字はちょっと物足りなく感じられるかもしれない。
AFエリアモードは、1点測距の「シングルポイントAF」とより小さな範囲の「ピンポイントAF」、より広い範囲の「ワイドエリアAF(L)」と「ワイドエリアAF(S)」、たぶん選択したフォーカスポイントから外れてもまわりのフォーカスポイントがカバーしてくれる「ダイナミックAF」、自動選択となる「オートエリアAF」がある。
気になったのは、顔認識が「オートエリアAF時の」と書かれている点で、シングルポイントAF時とかには使えない、という意味かもしれない。また、瞳AFについても触れられていないので非搭載と考えてよさそうだ。
どちらもマイナス4EVの低輝度でもAF可能な「ローライトAF」があるが、メニューでオンオフを選択する仕様らしいのがどうしてなのかは謎だ。
連写速度は5.5コマ/秒。これはAFとAEが追従する高速連続撮影時の数字で、連写中も「被写体の動きがほぼリアルタイムに表示」されるとのこと。実際にスピードの速い被写体を追うときのパフォーマンスは今のところ不明だ。
また、高速連続撮影(拡張)モード時はAFは追従するが、AEは1コマ目でロックされる。Z7は9コマ/秒で19コマ、Z6は12コマ/秒で43コマの連写が可能だ(いずれも14bitロスレス圧縮RAW時)。
シャッターは最高速1/8000秒だが、シンクロは1/200秒とやや遅めのスペック。物理幕のメカシャッターのほか、メカショックの少ない電子先幕シャッター、「サイレント撮影」を可能にする電子シャッターも備えている。もちろん、「フリッカー低減」機能もある。
369万ドットのEVFとマグネシウム合金ボディ
EVF(電子ビューファインダー)は369万ドットの有機ELを採用。倍率は0.8倍。個人的には表示映像を少し縮小してケラレにくくしたハイアイポイントモードを勝手に期待していたけど、その手のサービス機能はない模様。
ファインダー撮影時に拡大ボタンを押すことで画面の一部を拡大可能。中央ボタン、Fn1/2ボタンでは50%、100%、200%から選択した倍率にワンタッチで拡大できる。
のはいいが、これがAF時にも使えるかどうかは不明。ウェブサイトの画像は撮影距離のスケールらしいのが表示されているので、もしかしたらMF時のみの対応かもしれない。
液晶モニターは3.2型、210万ドットのチルト式で、ピンチやスワイプ操作による拡大、縮小なども可能。ただし、縦位置への対応はなし。そこのところはとても残念だ。
ボディはマグネシウム合金製で、グリップが深いのが売り。各部にシーリングがほどこされていて、「悪天候でも安心して撮影できる」と言う。ホールド性と防塵・防滴性能に悩みのあるソニーα系のユーザーとしてはとても気になる点だ。
記録メディアはXQDカードのシングルスロット。D5やD850、D500にも採用されているものなので、ニコンとしては妥当な選択なのだろう。が、まわりはSDカードがデファクトスタンダード状態なのでちょっとなぁ感はある。
たぶん、ボディを薄型化した関係でデュアルスロット化が難しかったのかもしれなくて、XQDかSDか、と考えればニコン的にはXQDになっちゃうんだろうなぁ、と思う。
バッテリーはEN-EL15bという新タイプで、容量は今のところ不明。撮影可能枚数はZ7が330枚、Z6が310枚(いずれもファインダー撮影のみでの数字)。従来のEN-EL15やEN-EL15aも使用可能とのことだが、撮影可能枚数は少なくなるらしい。
4K動画と8K/6Kタイムラプス動画
動画は4K(3840×2160ピクセル)で30p。フルHDだと120fpsとなる。AF-Cや電子手ブレ補正も併用する「ハイブリッドVR」も可能だ。
ワタシ個人は動画は詳しくないのでよくわからないが、ニコン独自のN-Logに対応していて1300%のダイナミックレンジが得られるらしい。
Z7は8K、Z6は6Kのタイムラプス動画用素材が撮れる「インターバルタイマー撮影機能」、露出のバラツキを抑える「露出平滑化」機能も備えている。また、4Kタイムラプス動画をカメラ内で生成できる機能もある。
高画質を実現するための大口径Zマウント
レンズマウントには新開発の大口径Zマウントを採用。マウント内径55mm、フランジバック(マウント面から像面までの距離)16mmとしている。一眼レフで長年使いつづけてきたFマウントに比べて光学設計の自由度は格段に上がるので、写りにはおおいに期待できる。
ボディと同時に発表されたレンズのうち、
- Z 24-70mm F4 S
- Z 50mm F1.8 S
- Z 35mm F1.8 S
の3本は年内発売予定。交換レンズのロードマップも公開された。
それによると、2018年には超大口径タイプの
- Z 58mm F0.95 S Noct
- Z 20mm F1.8 S
- Z 85mm F1.8 S
- Z 24-70mm F2.8 S
- Z 70-200mm F2.8 S
- Z 14-30mm F4 S
の6本、2020年には
- Z 50mm F1.2 S
- Z 24mm F1.8 S
- Z 14-24mm F2.8 S
の3本をリリースするという。
豊富なFマウントのレンズを装着できる「マウントアダプターFTZ」も用意。絞り駆動用のメカも内蔵している。
ただし、AFモーターはないので、AF撮影が可能なのはAF-I、AF-S、AF-Pレンズにかぎられる。このへんは妥当な割り切りだと思うが、サードパーティーからAFモーター内蔵のマウントアダプターも出たりするかもしれない。
が、ニコンとしてはマウント仕様は他社に公開する予定は(今のところ)ないとのことなので、シグマやタムロン、ツァイスなどがどう動くかは不透明だ。個人的な感覚としては、今の時代にそういうのはちょっとどうかなぁ、と思ってしまう。考え直してもらえるとうれしいけどね。
気になる点もちらほら
あと、スマホアプリがちゃんと動いてくれるかどうかとか、カスタマイズ系のメニューがどれぐらい充実しているかとか、実際に握った感じはどうなのかとか、気になるところはいろいろあるが、そのへんもわかり次第お伝えできればと思っている。
追加の情報
いくつか書ききれていなかったことを以下に追加しておく。
レンズのフォーカスリングについて
公式サイトのZマウントレンズのページに、コントロールリング(フォーカスリング)に「M/A」「絞り値」「露出補正」を割り当てられると書かれている。設定の変更はカメラ側から行なう。
「M/A」はAFモードのままリングを回す操作で即座にMFに切り替えられるもので、ようはフルタイムマニュアルフォーカスだ。この記述だけでは確定はできないが、AF-Cモードでもフルタイムマニュアルフォーカスが使える可能性が高い。とてもうれしい。
「絞り値」と「露出補正」は動画向けの機能で、コマンドダイヤルの操作と違って動作音や動作ショックなしで絞り値の変更や露出補正操作が行なえるということだと思う。
記録メディアについて
Z7、Z6とも「将来的にCFexpressカード(Type B)にも対応予定」と書かれている(ただし、ファームウェアアップデートが必要)。
正直、ニコン以外は採用していないXQDカードには、ちょっとなぁ感がいっぱいなわけだが、次世代メディアに対応可能となれば、安心してもよさそうな気がする。
レンズの「S-Line」について
Zマウントレンズの製品紹介ページに「S-Line」と書かれている。発表会で見せたロードマップではすべてのレンズが「S-Line」だった。
個人的には、これは高画質タイプのシリーズだと思う。なので、もっとリーズナブルなレンズも将来的には登場する可能性が高い。
ロードマップ中でも、2020年には3本、2121年には8本の線が引かれていて、公表されている以外のレンズの登場が期待できそうだ(もちろん、裏切られる可能性も十分あるが)。
連写パフォーマンスについて
Z7は最高9コマ/秒、Z6は最高12コマ/秒とスペックは高いが、いずれも14bitロスレス圧縮RAW時は8コマ/秒、9コマ/秒に低下する。
連続で撮れる枚数も、Z7はJPEGで25枚、14bitロスレス圧縮RAWで19枚。Z6でもJPEGが44枚、14bitロスレス圧縮RAWで43枚と、高速連写モデルと呼ぶには心もとない数字に感じる。
価格と発売日
品名 | 価格 | 発売日 |
---|---|---|
Z7ボディ | 44万円前後 | 9月28日 |
Z7 24-70mmキット | 51万3000円前後 | 9月28日 |
Z7 FTZキット | 45万9000円前後 | 9月28日 |
Z7 24-70mm + FTZキット | 53万4600円前後 | 9月28日 |
Z6ボディ | 27万円前後 | 11月下旬 |
Z6 24-70mmキット | 34万8300円前後 | 11月下旬 |
Z6 FTZキット | 29万4300円前後 | 11月下旬 |
Z6 24-70mm + FTZキット | 36万9900円前後 | 11月下旬 |
Z 24-70mm F4 S | 13万6500円 | 9月28日 |
Z 35mm F1.8 S | 11万4000円 | 9月28日 |
Z 50mm F1.8 S | 8万3500円 | 12月中旬 |
マウントアダプターFTZ | 3万6500円 | 9月28日 |
Z 58mm F0.95 S Noct | 未定 | 2019年 |
Z 20mm F1.8 S | 未定 | 2019年 |
Z 85mm F1.8 S | 未定 | 2019年 |
Z 24-70mm F2.8 S | 未定 | 2019年 |
Z 70-200mm F2.8 S | 未定 | 2019年 |
Z 14-30mm F4 S | 未定 | 2019年 |
Z 50mm F1.2 S | 未定 | 2020年 |
Z 24mm F1.8 S | 未定 | 2020年 |
Z 14-24mm F2.8 S | 未定 | 2020年 |
おもなスペック
Z7 | Z6 | |
---|---|---|
発売年月 | 2018年9月28日 | 2018年11月下旬 |
撮像センサー | 裏面照射型CMOS | ← |
有効画素数 | 4575万画素 | 2450万画素 |
ISO感度 | ISO64-25600、ISO32相当の減感、ISO102400相当の増感可 | ISO100-51200、ISO50相当の減感、ISO204800相当の増感可) |
ボディ内手ブレ補正 | 5軸、5.0段分 | ← |
ファインダー | 0.5型有機EL、369万ドット | ← |
視野率・倍率 | 100%・0.8倍 | ← |
アイセンサー | 内蔵 | ← |
液晶モニター | チルト式3.2型TFT、210万ドット、タッチパネル内蔵 | ← |
シャッター | 物理幕、電子先幕、電子シャッター | ← |
シャッター速度 | 1/8000秒-30秒、シンクロ1/200秒 | ← |
高速連続撮影 | 5.5コマ/秒(14bit RAW時は5コマ/秒) | 5.5コマ/秒(RAW時も速度低下なし) |
高速連続撮影(拡張) | 9コマ/秒(14bit RAW時は8コマ/秒) | 12コマ/秒(14bit RAW時は9コマ/秒) |
連続撮影可能枚数 | JPEG FINE/L:25枚、14bitロスレス圧縮RAW:19枚 | JPEG FINE/L:44枚、14bitロスレス圧縮RAW:43枚 |
ファイルサイズ | JPEG FINE/L:17.2MB、14bitロスレス圧縮RAW:55.8MB | JPEG FINE/L:9.4MB、14bitロスレス圧縮RAW:28.2MB |
フリッカー低減 | 可能 | ← |
オートフォーカス | ハイブリッドAF | ← |
検出範囲 | -1-19EV(ローライトAF時は-4-19EV) | -2-19EV(ローライトAF時は-4-19EV) |
フォーカスポイント(測距点) | 493点(左右29×上下17点) | 273点(左右21×上下13点) |
動画記録画素数/フレームレート | 4K UHD/30p、フルHD/120p | ← |
最大ビットレート | 144Mbps | ← |
動画ファイル形式 | MOV、MP4 | ← |
最長記録時間 | 最長29分59秒 | ← |
記録メディア | XQDカード(シングルスロット) | ← |
電源 | EN-EL15b(付属)/15a/15 | ← |
撮影可能枚数 | ファインダーのみ:330枚、モニターのみ:400枚 | ファインダーのみ:310枚、モニターのみ:380枚 |
大きさ | 幅134×高さ100.5×奥行き67.5mm | ← |
重さ | 675g(電池とメディア含む)、585g(本体のみ) | ← |
実売価格 | ボディ:440,000円前後 | ボディ:270,000円前後 |
24-70mmキット:513,000円前後 | 24-70mmキット:348,300円前後 | |
FTZキット:459,000円前後 | FTZキット:294,300円前後 | |
24-70mm + FTZキット:534,600円前後 | 24-70mm + FTZキット:369,900円前後 |
※高速連続撮影(拡張)モードは、AFは追従、AEは1コマ目で固定となる。
※Z7などの発売日が発表されたので修正しました。
※Z 50mm F1.8 Sの発売日が12月中旬に変更されたので修正しました。
ニコンのミラーレスカメラ製品一覧とZマウントレンズ製品一覧のページです。